1.6%。7-9月期の前年同期比の成長率だ。危機というしかない。 第2次オイルショック(1980年)、通貨危機(1998年)、世界金融危機(2008)に続き、また四半期の成長率が2%以下に落ちたからだ。 設備投資の減少が沈滞の大きな要因だ。 成長基盤が揺れているということだ。 まさにこうした沈滞の中に中国の影が見える。 

  韓国の対中国輸出のうち1、2位を占める品目はLCD(液晶ディスプレー)と半導体。 ほとんど20%を占める。 関連部品まで含めるともっと大きい。 しかし来年からは変化があると予想される。 該当企業が中国に現地生産体制を整えているからだ。 LGとサムスンはそれぞれ中国でLCD工場の建設に入り、半導体の場合、SKハイニックスに続いてサムスン電子も西安に大規模工場を建設中だ。 西安工場には計70億ドルが投資される。 工場が建設されれば雇用も中国に移る。 業界関係者は今後2年間で数万件の高級雇用(短大卒以上)を中国に奪われると見込んでいる。 


これは玩具・繊維・履き物など賃加工工場の初期の中国進出とはレベルが違う。 当時、賃加工企業は工場を移す代わりに、国内で高付加部品・素材などを作って中国に輸出した。 投資が輸出を誘発したのだ。 韓国の対中国輸出の約70%が部品・半製品である理由だ。 その過程で産業が高度化された。 しかし半導体とLCDの中国投資は国内誘発効果が少ない。 関連部品工場も同時に進出しているからだ。 製造業の空洞化どころか、先端産業の空洞化を心配しなければならない。 情報技術(IT)分野だけでない。 自動車・機械・鉄鋼など、ほとんどの産業で韓国企業は中国というブラックホールに吸い込まれている。 とはいえ、市場を求めて出ていくという企業を引き止めることもできない。 良い企業環境を提供できない自分たちを責めるしかない。 

  過去20年間、韓国経済にとって中国の存在は幸運だった。 中国のおかげで大きな衝撃なく産業高度化が進み、世界工場の中国は韓国に輸出市場を提供した。 韓国の輸出の約25%が中国へ向かう。 97年の通貨危機、08年の世界金融危機当時には、中国に危機克服の突破口を見いだしたりもした。 しかし今後はこういうことを期待しにくい。 適切に対応できなければ、中国はむしろ韓国経済にとってマイナスとなる。 LCD・半導体の工場移転に危機感を感じる理由だ。 

  問題意識がないのが問題だ。 この国を今後5年間率いるという大統領選挙候補は「経済民主化」を合唱しているだけで、中国へ出ていく核心企業をどう引き止めるかについての考えはない。 どのようにブラックホールの中国に対抗するのか、政府の対策も見えない。 過去20年間、韓国経済を支えてきた一つの軸はこのように崩れつつある。 成長率1.6%が投げかけているもう一つの警告だ。