IGZOは「インジウム(In)」「ガリウム(Ga)」「亜鉛(Zn)」で構成する「酸化物(O)」で、これを液晶パネルのTFT(薄膜トランジスタ)に利用することで、高精細で明るく、高精度なタッチパネルと低消費電力を実現している。
液晶ディスプレイは一般的にそれぞれの素子が格子状に並び、それぞれの枠にはひとつずつ薄膜トランジスタが付けられている。igzo_800x600この薄膜トランジスタに電気を通し、枠内の液晶を変化させることで、バックライトからの光を通したり、遮ったりして、画面の文字やグラフィックが表示される。ただ、薄膜トランジスタは液晶の格子の枠内に付けられているため、実はバックライトの光を部分的に遮ってしまっている。これに対し、IGZOは一般的な液晶に採用されているアモルファスシリコンに比べ、電子移動度が高いため、格子の枠内に付けるトランジスタを小型化でき、なおかつ格子の枠の細線化ができるため、バックライトを遮るものが大幅に少なくなり、高精細化を実現しやすく、なおかつ少ない光量のバックライトで液晶パネルを明るく表示させることが可能になる。つまり、同じ明るさを得るために、従来のアモルファスシリコンの液晶ではバックライトをより明るいものにしなければならないが、IGZOであれば、無理に明るいバックライトを用意しなくても透過率が高いため、十分な明るさが得られ、結果的に消費電力もグッと抑えることができる。従来のCG Silicon液晶と比較してもバックライトの透過率は、約1.2倍まで向上している。igzo_DSC07071

 この低消費電力化については、もうひとつIGZOならではのアドバンテージがある。一般的なアモルファスシリコンの液晶は、まったく動きがない静止画を表示しているときでもその画面表示を維持するため、CPUと液晶パネルは1秒間に60回も動作している。これに対し、IGZOは1秒間に1回動作するだけで、表示を維持することができるため、それ以外の時間はCPUの動作を休止することができる。ちょうどクルマのアイドリングストップと比較するとわかりやすいが、従来のアモルファスシリコンによる液晶パネルは信号で停まっているときも常にエンジンが動いたままのアイドリング状態であるのに対し、IGZOは信号で停まったときはアイドリングを止め、消費電力をグッと抑えることができる。シャープがテストしたところによれば、2011年冬に発売されたAQUOS PHONE SH-01Dと比較したところ、連続静止画の表示時間は約4.8倍の約24時間、連続動画の再生時間も約2.8倍の約11時間を実現しているという。

基本特許は、科学技術振興機構(JST)が保有し、シャープ以外に韓国サムスン電子などにもライセンス供与されている。
ただし「IGZO」としてはシャープが商標登録している。(商標登録第5451821号) そのためシャープ以外のメーカーは酸化物半導体などと呼称している。