東洋紡 東洋紡は2013年2月5日、液晶ディスプレイの虹むら(意図しない着色)を解消できるフィルム「コスモシャイン」を慶応義塾大学 教授の小池康博氏と共同開発したと発表した
 従来、液晶パネルの内部で用いられる樹脂フィルムには、なるべく複屈折量(位相差)が少ない、すなわち光学等方性が高いものが使われていた。複屈折があると、色味が変わる弊害があるからだ。コスモシャインは、複屈折量を極端に高めるという逆転の発想で、LED光源を利用する液晶ディスプレイで虹むらを防ぐことに成功した。



現在の液晶パネルでは、偏光板の保護フィルムなどに、TAC(Triacetylcellulose)フィルムが多用されている。TACフィルムの製造には、光学等方性を確保するために「溶液流延製膜法」が一般に使われている。ポリマを溶剤に溶かして広い板の上に薄く広げ、溶剤を揮発させながらフィルムを製造する製法だ。延伸すると分子の向きがそろうことで複屈折が発生してしまうため、これを防ぐ目的である。

 これに対し、コスモシャインは安価なポリエステルを使った延伸フィルムでありながら、虹むらを防ぐことができる。通常のフィルムが持つ複屈折量が1000~3000nm程度なのに対し、コスモシャインの複屈折量は約10000nm。これにより「偏光を解消する」という特性が生じ、光学等方性が高いフィルムと同様に使用できるようになった。

 主な用途としては、TACフィルムが主に使われている偏光板保護フィルムに加え、タッチ・パネル用のベース・フィルム基材を想定している。液晶ディスプレイの表面に貼ることで偏光を解消し、偏光サングラスでの視認性を上げるという用途も考えられる。

 東洋紡は、既存の光学用フィルムの設備を一部改修することで、この製品を生産する計画だ。2012年には既にフィルムの主力工場の一つである犬山工場の1ラインを改修し、量産体制を整えているという。1ラインの生産量は月産約1000万m2である。2015年には150億円の売上高を目指す。