東洋紡_1
東洋紡は、2013年2月に慶応義塾大学の小池教授と共同で開発したLCD用PETフィルム「コスモシャイン(超複屈折タイプ)」を発表した。
同社はこれまでもPETを原料とした偏光板プロテクトフィルムやバックライト用光学フィルムを生産してきたが、今回の開発品はPVA保護フィルム、タッチパネル用ベースフィルムといったディスプレイ向けの新用途が想定されている。
中でもPVA保護フィルムは、2012年時点で8億㎡を超える巨大市場であるが、これまでPETフィルムが採用されてこなかった市場でもある。PETフィルムは樹脂が低コストであること、コシが強く耐久性に優れることから、これまでもPVA保護フィルム用途への採用が期待されていた。しかしながら、PET樹脂の複屈折の発生による光学的な問題をクリアできず、開発段階で量産化を断念したメーカーも存在する。

今回東洋紡が発表した超複屈折PETフィルムは、LED光源の波長に合わせて屈折率を意図的に高めることで、位相差フィルムを用いることなく、ムラを抑える効果をフィルムに持たせている。
PVA保護フィルム市場は、TAC(酢酸セルロース)を中心にCOP(シクロオレフィンポリマー)、アクリルといった樹脂が競合しているが、光学要求の高さから素材毎に参入メーカーが限られている。ただし、偏光板用光学フィルム
市場では、これまでも製膜・延伸といった分野で独創的な新技術が登場し、競争促進が続いてきた。
今回の開発品がPVA保護フィルムとして採用拡大が進むためには、偏光板の生産プロセスに適応させることが必要となるため、現時点で市場拡大の見通しは不透明である。ただし、フィルムの画質向上・コスト低減に寄与する
ことから偏光板市場の変革を促す一要素として、今後の動向に注目が集まっている。