シャープ
昨日の日経新聞によるとシャープと韓国サムスン電子の密談は昨年の12月に行われていたと伝えられている。
 その会談よりも以前から、窮地に陥っていたシャープは工場の操業度確保のため、12年10月よりSamsungから40型LCD-TVパネルを受注しており、ビジネス上の関係を深めていた。
 昨年12月13日、大阪市のシャープ本社。サムスン副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)が、社長の奥田隆司と会長の片山幹雄を「表敬」に訪れた。李在鎔は李健熙(イ・ゴンヒ)会長の長男で次期トップの最有力候補とされる。液晶技術を巡って訴訟合戦を繰り広げてきた両社の首脳による会談はこれが初めてだ。
「堺に出資させてもらえませんか」。挨拶の後に李在鎔はこう切り出した。
しかし、テレビ用大型パネルを生産する堺工場(堺市)は昨年7月、鴻海グループから出資を受け共同運営に切り替えたばかり。奥田と片山は「鴻海と一緒にやってますからこれは厳しいですね」と拒否した。 このやり取りを聞いていた取締役の藤本俊彦が「ならばうちの本体へ出資してもらえませんか」と呼びかけると、李は「考えましょう」と静かに応じた。資本提携に向けた交渉が動き出した瞬間だった。

当時を振り返ってみると、国内情勢としては自民党が圧勝して、FPD業界でも[台湾経済紙・論調] 自民圧勝を歓迎、日台提携強化に期待感というような業界としても「日台共闘」に好意的な空気が流れていた。

一方、日本企業は今のような円高是正のまだ足元状態で、収益立て直しのため奮闘していた真っ最中で、パナソニック、プラズマ開発を打ち切り-有機ELにシフトというようなリストラの機運の真っただ中だった。



シャープも資金繰りに水面下で激しく動いており、12月4日に、米クアルコムからの約99億円の出資受け入れを発表している。

冒頭のサムスン電子との密談の9日前のことである。

相前後して、シャープ“虎の子”IGZOの記事が当サイトに掲載されていた。
シャープ“虎の子”IGZOの優位は「1年程度」 韓国サムスン、同じ技術で猛追中と題しており、"IGZOに関心を寄せる韓国サムスンの2012年度の研究開発費見込みは13兆6千億ウォン(約1兆300億円)といわれ、シャープの約7倍にのぼる。ライバル会社をけ落とすためならば、豊富な資金力を生かし、損をしてでも勝負を仕掛けるという“豪腕”経営を実践してきた。それだけに、すでにJSTと基本特許のライセンス契約は結んでおり、「シャープの特許という壁はあるものの、サムスンが本気になれば、キャッチアップは想像以上に早いかもしれない"と締めているが、サムスンが本気なのかどうかはわかっていない。

明けて13年1月に韓国サムスン電子、中国・昆山工場に17億ドル投資へ=報道と中国への工場投資を発表しており、決してシャープの工場キャパがほしいわけでは無い。

上記を総合するとやはりサムスンの狙いは、IGZOに関心を寄せているとしか思えない。有機ELへの傾倒の一方、冷静に代替技術としてIGZOも手中にしようとしているとしか思えない。
シャープの経営陣もサムスンとの提携には一枚岩ではなかった。
 「あのサムスンからの出資などありえない」――。交渉を主導した片山らから経緯の説明を受けると、ある幹部は強い拒否反応を示した。社外取締役の一部などからも、シャープを苦境に追い込んだ宿敵といえるサムスンからの出資には反対論が出た。
サムスンは当初、400億円程度の出資も提案したという。最終的に103億円(発行済み株式の約3%)にとどまったのは、こうした社内感情に配慮した結果かもしれない。
 2013年3月期の連結最終損益が2期連続の巨額赤字となるシャープ。最大の経営の足かせは主力の亀山工場(三重県)だ。最新の中小型パネルやテレビ用パネルを生産する第2工場は中小型の販売苦戦などから、昨年秋の稼働率は3割程度に落ち込んでいた。
 その亀山に異変が起きたのが昨年12月ごろ。「急にサムスン向けの生産が増えて驚いた」。工場関係者は振り返る。中小型パネルの専用拠点とするはずだった第2で、サムスン向けのテレビ用(32型)パネルの生産が増え、稼働率は約6割まで高まった。
 同じころ、米アップルのスマホ「iPhone5」向けパネル専用の第1工場は生産量が急減した。シャープの経営の下支え役だったアップル向けの変調で、もはや頼れるのはサムスンしかいなくなった。「サムスンとの話がつぶれたらうちもつぶれる」(シャープ首脳)というほど追い込まれていた。
S-LCDの例からもわかるように、日本企業の機密保持に関する脇の甘さは、赤子の手をひねるようなもので、サムスンとしては、ビジネス関係が続いてさえいれば、自然とIGZOの技術情報も手に入れられると思っているに違いない。
その怖さをどのように判断するかで、シャープ内に拒否反応があったのだと思える。


サムスンとの資本提携が発表された3月6日夜、大阪市内の中華料理店に鴻海の董事長、郭台銘の姿があったようだ。
 シャープ・サムスンの提携合意が事前に耳に入った郭は、5日夕刻に予定されていた奥田と片山との会談を直前にキャンセルした。慌てたシャープは、奥田の親書に翌日公表する資料を添えて鴻海側に渡したが、郭からの返事はなかった。
6日夜の会食に出席したのは堺工場の幹部だけで、シャープ関係者は招かれなかった。

 シャープと鴻海は昨年3月、資本・業務提携で合意した。郭の狙いは液晶テレビなどデジタル製品の覇権を握りつつあるサムスンをシャープと組んで倒すこと。
だから「シャープに裏切られた」との思いがあっても当然だろう。
 サムスンからの出資が発表になった6日午後4時、シャープの社員向けサイトに社長の奥田のメッセージが掲載された。
「サムスンからの出資は経営への関与につながるものではありません。事業規模が競争力を左右する液晶産業というパワーゲームに、サムスンとの協業を通じて当社の強みを最大限に発揮しようとするものです」
今回の提携では、サムソンが一番得をした。

しかしそこまでシャープを追い込んでしまったのは鴻海+台湾当局の稚拙さと自己を過小評価しルビコン川を渡ってしまったシャープのナイーブさである。
今回のパワーゲームでの勝者・敗者のコントラストは明瞭に際立っている。