鴻海精密工業の郭台銘董事長は26日の株主総会で、コネクター、カーボンナノチューブ(CNT)、特殊接着剤の3事業を切り離し、分社化する計画を明らかにした。鴻海集団の核心的競争力の調整が目的と説明し、グループは「航空母艦」から陸海空にまたがる「戦闘隊」に変貌を遂げると強調した。これら事業分割が成功した後は、さらに対象事業を拡大する方針も示した。27日付工商時報などが報じた。



郭董事長は先日、メディアのインタビューで組織改編について、「成長した子どもが独立するのと同じ」との見方を示していた。ただ、分離するのは▽精密機械▽光学▽モジュール▽新素材▽クラウドコンピューティング──など同社の掲げる「8屏1網1雲」計画以外の部品や事業が対象で、まずはコネクター事業を分割すると発言していた。コネクター事業は20年以上の核心事業で、実力は他社を大きく引き離していると説明。分割後3年以内に世界首位または2位に躍り出ると自信を見せていた。現在コネクター事業は「NWInG(ネットワーク・インターコネクション事業グループの略)」と呼ばれているが、今後はフォックスコン・インターコネクト・テクノロジー(FIT)として、早ければ年内にも独立する見通しだ。盧松青NWInG副総裁は株主総会で既に中国市場では最大手と説明。分離後初年度の2014年売上目標は1,000億台湾元(約3,200億円)と語った。なお今年は800億元の見通しだ。
 また、郭董事長はCNT(天津富納源創科技)と特殊接着剤(鴻海の一部門)事業については、分割後はトップに40代の若手を配置する考えを示した。これ以外にも分割の候補事業は20以上、優秀な幹部候補も100人以上と説明し、鴻海は100年続く企業を目指すと強調した。
 一方、苦戦が続く中国市場での小売戦略については、中台が先週調印した海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)のサービス貿易協定に電子商取引が対象分野に含まれていることから、将来性が高いとし注力していく方針を示した。プラットフォームの名称も「富連網」として中国で登録したという。鴻海は以前、今後実店舗は出店せず、体験型店舗を展開し、購入はインターネットという構想を明かしていた。これについて郭董事長は「新事業については3~4年の時間が欲しい」と株主らに訴え、小売り事業の立て直しに力を入れる姿勢を示した。
 また、シャープとの出資交渉については、期限は15年3月26日まで残されているとしたものの、具体的な内容は明らかにしなかった。そして、「交渉開始から数えて交渉相手は既に4人目だ」と語り、改めて新社長となる高橋興三新氏と交渉を行う考えを示した。ただ、シャープは鴻海と犬猿の仲であるサムスン電子と資本提携を結んだことから、鴻海・シャープの提携交渉が改めてまとまる可能性は低いと観測されている。