鴻海精密工業は31日夜、中国子会社2社の機器設備65億台湾元(約210億円)相当を顧客のアップルに売却すると発表した。業界では、CNC(コンピューター数値制御)装置がアップルの受注とともに、華宝通訊(コンパル・コミュニケーションズ)の南京工場に移転するとの観測が浮上している。アップルは華宝通訊と緯創資通(ウィストロン)をサプライチェーンに加えるとみられており、アップル成功の立役者として鴻海が恩恵をほぼ独占した従来の構図が崩れつつある。1日付工商時報などが報じた。
鴻海は、傘下の富泰華工業が機器設備1万3,349台を売却、鴻富錦精密電子(鄭州)も8,025台を処分すると発表した。取引額は21億1,300万元と43億9,000万元。
売却益はゼロ。鴻海は、同社がアップルのために代理購入し、使用した設備をアップルが買い戻す形のためと説明した。経済日報などによると、こうしたケースはよくあることで、技術の流出防止が目的だ。

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 業界観測によると、設備移転先とされる華宝通訊はアップルの小型タブレット型パソコン「iPad mini」の第2世代機種の受注がほぼ確定している。南京2工場をアップル専用とし、1基では第2世代「iPad mini」を早ければ来年上半期に量産し、もう1基でハイエンドのスマートフォン「iPhone」を受け持つとされる。
 鴻海は、正常な取引を通常通り発表しただけだと説明した。華宝通訊は、特定の顧客の情報にコメントできないと表明した。
 外資系証券会社の間でも、アップルが組み立ての委託先を分散するため、鴻海と和碩聯合科技(ペガトロン)が受注してきたiPad miniとiPhoneを華宝通訊、ウィストロンにも振り分けるとの見方が相次いでいる。
 欧州系の証券会社アナリストは、アップルのリスク分散で、経験豊富な鴻海でさえも受注を守り続けるのは困難だと指摘した。世界金融危機発生後に大規模投資した設備が、将来は遊休資産になる恐れがあるとの見方を示した。
 アップルの委託先変更は珍しくはない。サプライチェーン関係者によると、アップルは以前、ノートPC「MacBook」を精英電脳(ECS)に生産委託していたが、華碩電脳(ASUS)がECSの中レキ工場(レキは土へんに歴、桃園県)と生産部隊を買収したため、ASUSと広達電脳(クアンタ・コンピュータ)に委託先を移したことがある。
 その後、ASUSがノートPCブランド事業に参入したため、アップルは仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)を新たなパートナーに選んだ。しかしコンパルの「MacBook」生産がうまくいかず、関係は決裂した。このほど第2世代「iPad mini」の受注観測が出ている華宝通訊は、コンパルと同じ金仁宝集団に属し、業界では意外な選択と驚きの声もある。