ノートパソコン大手ブランド、宏碁(エイサー)の王振堂董事長兼執行長(CEO)は5日、赤字続きの業績の責任を取って来年辞任すると表明した。第3四半期の純損失は131億2,000万台湾元(約440億円)で過去最大。世界全体で7%の人員削減などスリム化を進め、来年の黒字転換を目指す。近年アップルが勢力を拡大し、タブレット型PCの隆盛でノートPCは低迷が続く中、華碩電脳(ASUS)はアイデア製品で低価格市場を切り開き、聯想集団(レノボ)は本拠地の中国ユーザーを取り込み世界首位に浮上しており、出遅れたエイサーは巻き返しが迫られる。6日付工商時報などが報じた。
王董事長は、来年元日に執行長を翁建仁総経理に引き継ぎ、来年6月の任期満了をもって董事長を退くと説明した。後任は未定。エイサー創業者、施振栄(スタン・シー)氏の息子、施宜輝エイサー董事との市場観測が出ているが、これを認める発言はなかった。ASUSやレノボとの合併説について王董事長は、可能性は低いと否定した。
 王董事長は、3段階の改革策を提示した。まずは無形資産の減損処理による「リセット」、続いて500~600人規模の人員削減や製品計画の中止など「再建」に1億5,000万米ドルを投じ、営業・マーケティング費用を年間1億米ドル削る。ただ、本部がある台湾の人員削減は多くないと付け加えた。その後、新たなビジネスモデル、サービス、付加価値を創出する「変革」を進める。

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 エイサーは同日の董事会で、1株21元で1億3,600万元の現金増資を実施し、約28億5,600万元の資金を調達することも決議した。
 エイサーは改革着手に当たり、施振栄氏が招集人を務めるエイサー改革委員会を設立した。施振栄氏はマスコミ宛てに送付した手紙の中で、変革は企業の永続的発展に必要だと強調。ウィンドウズOS(基本ソフト)のマイクロソフト(MS)とインテルが主導してきたウィンテルPCの時代が30年近く続いたが、近年はアップルがiPhoneやiPadなど新製品、アプリケーション(APP)開発者との協力による新サービスで勢力を増し、ウィンテル独占体制を崩したのは大変革だと指摘した。
 6日付電子時報は、エイサーは11年3月末のジャンフランコ・ランチ氏の執行長辞任後、再起が期待されていたが、モバイル端末やクラウドコンピューティングサービスなど市場の急速な変化に対応が遅れ、ノートPC市場が縮小する中、成長不足を補う製品を生み出せなかったと分析した。
 エイサーが同日発表した第3四半期の連結売上高は921億4,600万元で前期比3.1%増、前年同期比11.8%減だった。営業損失は25億7,000万元だったが、国際財務報告基準(IFRS)に従い「ゲートウェイ」「パッカードベル」などの商標権や営業権といった無形固定資産の減損処理99億4,300万元で、純損失が131億2,000万元に膨らんだ。第1~3四半期の純損失は129億4,900万元。
 同社は2008~10年は純利益100億元以上を保っていたが、ランチ執行長辞任後の11年第2四半期に純損失67億8,900万元を計上、11年通年で66億元の赤字に転落し、昨年は純損失29億元だった。今年は純損失170億元へと業績のさらなる悪化が予想されている。
 エイサーの株価は6日ストップ安(16.9元)となり、上場以来の最低を更新した。