パソコンブランド大手、宏碁(エイサー)は21日、創業者の施振栄(スタン・シー)氏(68歳)が同日付で董事長に就任すると発表した。わずか半月前の役員人事を覆す異例の事態だ。施氏は改革の成果が出るまでに2~3年はかかると強調した。台湾証券業界は、問題は経営トップでなく、ノートPCが衰退期にあることで、エイサーの起死回生は極めて困難とみている。22日付蘋果日報などが報じた。
エイサーは21日、王振堂董事長兼執行長(CEO)と翁建仁総経理が辞任し、施氏が董事長に就任し、世界総裁を暫定的に兼任すると発表した。

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 同社は第3四半期純損失が131億2,000万台湾元(約450億円)に膨らみ、今月5日に王氏の引責辞任を発表。来年元日に執行長を翁氏に引き継ぎ、王氏は来年6月の任期満了で董事長を退任する予定だった。同社は同時に、施氏が招集人を務めるエイサー改革委員会を立ち上げていた。 施氏は、董事長を務めるのは今期の董事会の任期満了までで、世界総裁は早急に適任者を選出すると述べた。次期董事長についてはめぼしい人材がいるが、次の董事会で推挙されるプロセスを踏む必要があると説明した。執行長は、意思決定の効率化のため設置せず董事長か世界総裁が兼任する。王氏と翁氏は経営をスムーズに引き継ぐため顧問となる。
 施氏は「経営危機が差し迫っている」として、報酬ゼロで董事長を全うする。昨年の財務諸表によると、翁世界総裁の年間給与額は3,000万元、王氏の執行長としての給与額は1,582万元、董事長としての給与額はゼロだった。
 1976年設立のエイサーは92年に組織再編、00年に受託生産事業のスピンオフ(分離・独立)で大幅赤字を乗り越え、一時は世界2位のPCブランドにのし上がった。05年、王氏が董事長に就任し、施氏はいったん引退した。ただ、ジャンフランコ・ランチ氏が11年3月に執行長を辞任した3度目の危機以降、ノートPC市場シェア縮小に歯止めがかからず、後追いとなったタブレットPC、スマートフォン販売も振るわないままだ。
 台新証券投資顧問の呉火生董事長は、創業者が会社のことを一番理解しており、エイサーには新しいやり方が必要だが、直面する業界の厳しさを考えれば慎重視せざるを得ないと述べた。華南証券投資顧問の儲祥生董事長は、PC産業は既に落ち目にあり、スマートフォンで一定の地位を築く方途がエイサーに果たしてあるのかと疑問を呈した。
 ハイテク業界の幹部クラスのある人物は、わずか半月での役員人事変更は企業イメージを損ない、従業員の会社に対する信頼感も崩れると指摘した。
 社歴20年のエイサー従業員は、当社に変革が必要なのは確かで、今残っている社員は誰もが会社に愛着があり、施董事長が率いるエイサーを再生させたいと話した。
 21日、台湾株式市場の加権指数が100ポイント以上下落した一方、エイサーは外資を中心に買われて前日比1.63%上昇し、15.6元で引けた。前回の役員人事発表翌日の6日はストップ安(16.9元)となっていた。