家庭の室内やオフィスを照らしてきた蛍光灯、それが一躍ハイテク製品の液晶パネル用の光源(=Backlight)として注目を浴びるようになったわけです。
すでに枯れた商品として広く浸透していたモノが、新興の最先端商品の一構成部材として採用されるに至り脚光を浴びたわけです。
これは、技術史を辿ってみても稀な事象だったと思います。
当時、液晶パネルの裏側に配置された蛍光管を見て、技術者が一様に違和感を覚えたのを思い出します。(1980年代の後半だったと思います)
その光源としての役割が、つい最近まで続いていました。今も細々と使われていますが主流はLEDに譲り、ほぼ30年に渡る液晶光源の歴史的な役割を終了しつつあります。

既存技術の流用ということでしたが、その液晶用光源確立に至る道程は一筋縄ではなかったのです。
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なにしろ求められた要求の水準が従来の照明用とは大きく違いました。輝度・寿命・色あい・消費電力・外形の細さ..そして後にテレビという大画面向けで長さという要素も加わりましたが、それらは従来の蛍光灯の設計・量産技術そして事業そのものを根本から見直すことを強いたのでした。

蛍光管は多くの材料から構成されています。ガラス・蛍光材・水銀・電極・リード線...構成材料のほとんどが日本企業でずっと量産されていて、彼らにとってこなれた材料でした。
それらほぼ全てが新たな挑戦を迫られました。
それらの中味をここで綴りつくすことはできませんが、パネルメーカーが高いハードルの要求を投げ、蛍光管メーカーがその解決要素を分解し、その内容を材料・装置メーカーに伝え開発依頼する、というサイクルが続いたのでした。
具体例を挙げると、輝度低下の低減・長寿命化、非点灯部分の縮小、低温始動の改善、低コスト化...。、
蛍光灯ってこんな程度という嵌められた枠を超え、従来の常識が非常識となる開発が進められ、結果として蛍光灯業界を大きく揺るがし事業転換がもたらされたのでした。
当初15mm以上あった外径が1.8mmに、寿命も仕様によっては70,000Hrの保証と従来より一桁向上し、1メートルを超える長尺化の実現という驚異的な進化を果たしました。
液晶という、言うなれば時代の注目を浴びた技術の中には、この蛍光管のように従来の技術を再構成し、チューンアップした技術が散りばめられ、支えているのです。
そういう意味で液晶パネルは科学の総合力で開花し、またいまだに発展を続けている興味深い製品と言えると思います。

ここまで、液晶が事業として開花するところまでを振り返ってきました。
ここまでを第一部として締めます。 

第二部は、テレビに応用されるまでの足どりを見ていきたいと思います。ここでもいろんなドラマがあった!
気の向いた時に書いていきますので、気長にお付き合い願います。


(以上で、第一部終了)