OLED140604AUOp3台湾AU Optronics(AUO)社は2014年6月4日、開催中の学会「SID 2014」で講演し、インクジェット印刷(IJP)技術を用いた有機ELとしては世界最大の65型ディスプレーを試作したと発表した。オーサーズインタビューでは、試作した実物も公開した。

 AUO社が試作したのは、画素数が1920×1080のフルHDの65型有機ELディスプレー。輝度は200cd/m2である。バックプレーンにはインジウムスズ亜鉛の酸化物(ITZO)TFTを用いた。キャリア移動度は33cm2/Vsと高い。


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 IJP技術は、透明電極であるITOの上のホール注入層(HIL)、ホール輸送層(HTL)、そして発光層の3層の形成に用いた。電子輸送層や電子注入層などの形成には真空蒸着法を用いている。

  IJP技術は特にHIL層の形成でメリットが大きいという。真空蒸着法ではわずかなゴミが基板にあると画素欠陥になるが、IJP技術ではそのゴミを覆うよ うにHIL材料が形成されるため、欠陥とならない。また、IJP技術で形成したHILの方が、真空蒸着法で形成したHILより寿命が約8倍も長いという。

  カラー表示には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層を横に並べるサイドバイサイド(SBS)方式を用いた。AUO社は、すべて真空蒸着を用いた SBS方式の有機ELは8層構造だったが、今回は5層構造であるとする。材料の利用効率も真空蒸着の場合の40%以下から、今回は80%以上に大きく向上 したとする。ただし、ディスプレーとしての性能や寿命、点欠陥の多さでは、今回の技術はまだ課題があるという。

 AUO社は2012年か らIJP技術を用いた有機ELディスプレーの試作を進めている。これまでは2012年に6型(400×300画素)、2013年に14型(940×540 画素)、そして今回の65型と大型化を進めてきた。今後は、精細度の向上を重視して開発を進めるという。今回のディスプレーの精細度は34ppi。「技術 としては150ppiまではメドが立っており、56型8K×4Kディスプレーも有機ELで作製可能」(AUO社)という。