サムスン電子は6日、京畿道平沢(ピョンテク)市に半導体の新工場を建設すると発表した。投資額は当初分だけで15兆6,000億ウォン(約1兆6,000億円)。2015年上半期に着工、17年下半期に稼動を予定する。DRAMやNAND型フラッシュなどのメモリーやプロセッサーを生産するとみられる。サムスンの大規模増産によりメモリー市場が再び供給過剰に陥って値崩れが起き、華亜科技(イノテラ・メモリーズ)などの収益を圧迫する他、台湾ファウンドリー業界に打撃を与えるとも懸念されている。7日付経済日報などが報じた。
サムスンは平沢市の産業団地に238万平方メートルの敷地を確保しており、このうちまず79万平方メートルを使って最先端の半導体工場を建設する計画だ。市況に応じて残りの土地で追加投資を計画している。
にほんブログ村 ニュースブログ ITニュースへ
にほんブログ村


 サムスンは「平沢工場の新設により当社は総合半導体メーカーとしての地位をさらに強化できる」と説明したが、生産する製品は明かしていない。ただ、同社は新工場の量産開始後、半導体生産能力が10?12%増えると予想している。
  サムスンは工場建設の理由について、「モバイル端末の需要で半導体市場は安定成長している」と説明した。市場関係者も、同社がこのタイミングで新工場を建 設する背景には、携帯電話用チップの需要を引き続き取り込み、最近のスマートフォン事業の販売不振を補う狙いがあるとみている。
 市場調査会社、 集邦科技(トレンドフォース)の呉雅?・研究協理は、サムスンは自社ブランドスマホへの自社製プロセッサーの採用割合が高まっていないため、平沢新工場は DRAMやNAND型フラッシュを生産する可能性が高いと予想した。さらに、大幅増産計画の公表には、同業他社の増産を抑制し、メモリー最大手の地位を引 き続き確保する狙いがあると指摘した。
 ただ、7日付経済日報は、サムスンがメモリーを増産する場合、自分で自分の首を絞めることになると指摘。サムスンにとってメモリーは最も収益を上げられる事業と言えるが、増産によって供給過剰となり価格が下落すれば、狙ったような利益を得られなくなるとの予想だ。
  DRAM市場はここ数年でようやく需給バランスを取り戻し、活況を見せていた。イノテラは昨年第4四半期から3四半期連続で100億台湾元(約360億 円)以上の純利益を上げているが、サムスンの新工場発表で市場で模様眺めムードが強まる恐れがあり、3年後は実際に供給が増えるとみられ不利だ。イノテラ は、サムスンがメモリー生産を決めたとしても当面、市場への影響は小さいとコメントした。
 なお市場調査会社のガートナーは、DRAM業界大手3社は今年、前年比26.3%増の441億米ドルと過去最高の売上高を記録するが、サムスンが増産に入った場合、16年には25.5%の減収となり、同年の半導体市場全体の成長率も1%にとどまると予測した。
 平沢新工場はプロセッサーを生産する可能性も十分にあり、市場関係者は、同工場発表は台湾積体電路製造(TSMC)に対する一種の宣戦布告で、何としてもアップルの次世代プロセッサーの受注を獲得したい野心の表れとみている。
 プロセッサー生産の場合は当面の設備稼働率を高めるために、顧客に低価格攻勢を仕掛ける可能性があり、台湾のファウンドリー業界にとっても懸念材料となりそうだ。