ジャパンディスプレイ(JDI)が中小型液晶パネル分野で圧倒的トップの座に王手をかける。米アップルからの資金提供を受け、石川県に工場を新設することを決めた。高い技術力を背景に、「アップル専用工場にしない」という好条件を引き出すことに成功。顧客分散を図りながら、リスクを抑えて世界シェア拡大を目指す。
 1月中旬。JDIが新工場建設を発表した3月6日から遡ること1カ月半。JDIとアップルとの交渉は一度、暗礁に乗り上げた。「JDI側の担当者が英語でまくし立て、アップル側の担当者が激怒して帰ってしまうこともあった」(業界関係者)。両社の条件闘争は熱を帯びた。
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 最終的にまとまった新工場計画はこうだ。低温ポリシリコン(LTPS)技術を使った高精細パネルを生産する工場を石川県白山市に新設する。設備投資額は約1700億円。2016年初夏に月産2万5000枚(第6世代のガラス基板)で稼働を始める。
  注目すべきはアップルと交わした条件。業界関係者によると初期投資の多くをアップルが負担し、JDIが徐々に返済していくという。またアップルのスマート フォン「iPhone」向けパネルの生産は1年のうち数カ月間に限るとの条件も勝ち取り、ほかのスマホメーカー向けのパネルもつくれるようにしたという。
 リンゴのおいしいところだけいただく―。JDIが新工場建設のリスクを低減するためには、アップルから好条件を引き出すことが不可欠。大塚周一社長の命を受けた有賀修二取締役をトップとする交渉チームは、時に強気で交渉に当たった。
  JDIにはアップルを“落とせる”確信があった。根拠は技術力。例えば「アイフォーン6プラス」。5・5型の大型パネル/フルハイビジョン画質/タッチパ ネル機能内蔵という3条件を満たす量産には高い技術力が必要。JDIは比較的スムーズに対応したが、韓国LGディスプレイは、立ち上がりからつまずいた。
 新工場×新モデルの生産プロジェクトはアップルにとってもリスクが相当高く、JDIは欠かせないパートナーに映っていた。そして3月6日。「アイフォーン7」と予想される16年モデルの量産に間に合うギリギリのタイミングで交渉がまとまった。
 実はJDIは独自技術の取り扱いでも有利な条件を勝ち取った。独自技術が関わる生産工程については、ノウハウ流出を防ぐため自己負担で設備投資を行うという。交渉を見守ってきた業界関係者は舌を巻く。「JDIもしたたかだ」。