経済部統計処が23日発表した5月の輸出受注は357億9,000万米ドルで前年同月比5.9%減となり、春節(旧正月)を除く過去22カ月で最大の減少率だった。減少額の過半を中国・香港からの輸出受注が占めた。経済部は年初時点で中国の「紅色サプライチェーン」による打撃を被るのは液晶パネルだけと想定していたが、今や電子製品全般に広がっている。24日付経済日報などが報じた。
5月の輸出受注は2カ月連続のマイナス成長で、前年同月比22億2,000万米ドル減少した。中国・香港からの輸出受注は89億8,000万米ドルで11億8,000万米ドル(11.6%)減少した。90億米ドルを割り込んだのは過去2年で初めて。春節の季節要因を排除すると5カ月連続のマイナス成長だ。


 林麗貞統計処長は、中国・香港からの輸出受注減少の主因として、▽世界経済の成長鈍化が中国の輸出に打撃を与えていること▽中国政府がサプライ チェーン現地化を全力で支援し、重要部品の自給率が高まっていること──を挙げた。特に半導体産業は中国政府が昨年1,000億人民元(約2兆円)を投じ ており、台湾のファウンドリーは先進プロセスの優位性があるものの、IC設計、パッケージング・テスティング(封止・検査)、DRAMは脅威が浮き彫りに なっていると指摘した。

 中国・香港以外からの主な5月輸出受注は、▽米国、97億9,000万米ドル(前年同月比5.2%増)▽欧州、 60億5,000万米ドル(1.7%減)▽東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国、43億8,000万米ドル(5.3%減)▽日本、24億 4,000万米ドル(23.8%減)──だった。
主要製品の5月輸出受注は、欧米からの受注が6割余りを占める携帯電話、パソコンなどのIT(情 報技術)製品が97億米ドルで前年同月比2.3%増だったが、他は▽電子製品、91億8,000万米ドル(3.5%減)▽精密機器(液晶パネルを含む)、 22億4,000万米ドル(16.5%減)▽基本金属、20億2,000万米ドル(16.5%減)▽機械、17億5,000万米ドル(10.3%減)▽プ ラスチック・ゴム製品、17億3,000万米ドル(16.7%減)▽化学品、17億米ドル(11.7%減)──と軒並みマイナス成長だった。これらは中 国・香港からの輸出受注が全体の2?6割で、基本金属以外は最多を占める。経済部は、機械は円安が、プラスチック・ゴム製品、化学品は原油安が減少の原因 と指摘した。
元大宝華総合経済研究院の梁国源董事長は、台湾の昨年の対中輸出依存度は15.5%と、マレーシアの19%に次いで世界で2番目に高 かったと指摘した。中国の「紅色サプライチェーン」台頭により、台湾の主力輸出製品であるハイテク電子製品や部品は中国メーカーとの競争にさらされてお り、特に台商(中国に進出した台湾系企業)が原材料や部品、機械設備などを現地で調達する比率が高まっていると指摘した。台湾は大部分の中国向け主力製品 の生産能力が過剰で、いったん中国の景気が減速すれば輸出リスクが高まると警告した。

 元大宝華は、台湾の今年の域内総生産(GDP)成 長率予測を3.32%へと3月時点より0.34ポイント下方修正した。輸出成長率の予測は3.59%と1.79ポイントの大幅引き下げで、民間投資は 2.73%へ1.18ポイント、個人消費は2.47%へ0.54ポイント引き下げた。梁董事長は、輸出、民間投資、個人消費のいずれも弱く、台湾経済は成 長の主軸を失っていると述べた。