SEL電子工学分野で世界的権威のある米国電気電子学会(IEEE)の2014年の半導体製造部門の特許技術評価で、米インテル(3位)や韓国サムスン電子(4位)をしのいで2位に食い込んだ日本企業がある。従業員830人の約7割を研究者が占める半導体エネルギー研究所(SEL、神奈川県厚木市)だ。
 液晶分野でシャープと低消費電力技術「IGZO」共同開発するなど、企業との共同研究や特許使用料で売り上げのほとんどを稼ぐ。現在の特許登録件数は2万2000件。売上高は非公開だが、550人の研究者を抱えて次世代半導体の研究設備に200億円を投じるだけの収益を確保している。



最終製品はなく、部品などの出荷品もないことから一般には知られていない。だが、半導体・液晶分野の研究者の間では知名度は高く、日本だけでなく米国やフランス、中国などから研究者を引き寄せている。
 SELが現在取り組むのが電力消費を10分の1以下に抑えた次世代半導体の量産だ。台湾の受託生産大手の聯華電子(UMC)と協業してCPU(中央演算処理装置)やメモリーの生産を来夏にも始める。
 山崎舜平社長(73)は「半導体に求められるものが処理能力から低消費電力に急速に移っている」と分析。6月の米技術学会での発表を受けて半導体業界では「これまでの常識を変える可能性がある」(米半導体メーカー首脳)と期待を集めている。
  技術特許という形なき資産で稼ぐ同社は、特許侵害への厳しい対応でも知られる。90年代には韓国サムスン電子の権利侵害を主張、生産中止を求め提訴した。 判決は100億円超の訴訟費用をかけたとされるサムスン側が勝訴したが、結果的にSELの技術力の高さを世界に知らしめた。
 独創的な研究によって特許を取得、その収穫物で稼いで次代の技術の種をまく――。山崎社長が「農耕モデル」と呼ぶSELのビジネスモデルは、「技術はあるが稼げない」と嘆く日本企業にとって目指すべき姿の一つといえるかもしれない。