シャープの高橋興三社長が31日、液晶事業の分社化、および他社からの出資受け入れを検討すると表明したことで、鴻海精密工業に再び資本提携のチャンスが訪れたとの観測が浮上している。鴻海は3日、シャープへの出資意欲は変わらないが、経営に参画できることが条件だと改めて強調した。液晶パネル市場調査会社、ウィッツビュー・テクノロジーは、液晶パネルは日本を代表する産業のため、外資への譲渡は考えにくいとの見方を示した。4日付聯合報などが報じた。
鴻海は3日、単なる出資でなく、技術移転なども含めた資本提携を望んでいるが、現在、両社の交渉に進展はなく、うわさが飛び交っている状態だと指摘した。また鴻海は、シャープと合弁の堺ディスプレイプロダクト(SDP)の第10世代工場は昨年から黒字が続いており、従業員に利益を還元したと説明した。堺市の竹山修身市長から先日、シャープのリストラ人員を引き受けてほしいと要請されたとも明かした。



 郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は今年6月の株主総会で、投資家の質問に対し「シャープが手に入れば、液晶パネルの技術面で韓国との距離を縮められる」と 答えていた。また、シャープの3日終値は165円と、過去最低の143円に迫っている。証券会社は、今なら安値でシャープに出資できる上、鴻海傘下の群創 光電(イノラックス)との日台協力で、「紅色サプライチェーン」構築が進む中国や韓国に対抗できると指摘した。
 証券会社は、鴻海はシャープの IGZO(酸化物半導体、イグゾー)技術が目当てで、もし出資が実現すれば、鴻海のハイエンド液晶パネル技術が向上すると指摘した。また、シャープはアッ プルのスマートフォン、iPhoneの2位サプライヤーで、主に4.7インチのLTPS(低温ポリシリコン)液晶パネルを供給しているので、もしシャープ の人材を獲得できれば、LTPS技術も向上すると予測した。
 イノラックスは、高雄市路竹区で第6世代のLTPSパネル工場を建設しており、8月に設備を搬入、第4四半期に試験生産を開始する予定だ。
 なお、シャープは2012年3月、鴻海を引き受け先とした1株550円、総額669億円の第三者割当増資を実施し、鴻海が株式9.9%を取得すると発表したが、出資のみを求めたシャープと経営参画を求める鴻海との溝が埋まらず、出資は見送られたままになっている。
  一方、ウィッツビューの邱宇彬協理は、SDPは世界でも数少ない大型パネルの生産ラインで、設立時に巨額の資金がかかっており、日本メーカーが軽々しくス ピンオフ(分離・独立)し、海外の企業に譲渡するとは思えないと語った。また、シャープ、およびジャパンディスプレイ(JDI)が主にアップル製品に液晶 パネルを供給しているので、もしシャープが液晶パネル事業を切り離せば、JDIの経営が苦しくなると予測した。こうした事情から、もしシャープがパネル事 業を手放すとしたら、日本の他の民間企業、または日本政府が引き継ぐとの見方を示した。
 邱協理はまた、たとえ鴻海が手中にしても、シャープは第6世代、第8世代、第10世代など生産ラインが複雑で、すぐに一貫生産には取り組めないと指摘した。