EMS(電子機器受託製造サービス)最大手、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は4日、インドに10年にわたる長期投資を行うと宣言した。「単純な組み立てだけでなく、重要部品や技術も含め、サプライチェーンを丸ごとインドに移植する」と語り、工場10~12基の建設に20億米ドル以上を投じてもよいと表明した。また、インドでは製造業に限定せず、インドが持つソフトの強みに鴻海のハードの強みを加えて、「1+1=2」以上の相乗効果を創出すると強調した。中央社などが伝えた。
郭董事長がインドを訪問したのは、この1カ月で2度目だ。郭董事長は「毎回来るたびに、『早くインドに本格進出せねば』という確信が募ってくる」と述べた。最終的な投資額については「まだ決まっていない。われわれは10年先を見ており、投資額より決意の方が重要だ」と語った。

 今後のインドでの生産体制について郭董事長は「(南東部の)アーンドラ・プラデーシュ州での生産を続ける他、(西部の)グジャラート州、マハーラーシュトラ州にも工場建設を検討している」と明かした。鴻海はアーンドラ・プラデーシュ州でスマートフォンを生産している。



 インドでアップルのスマホ「iPhone」を生産するかについて郭董事長は、「顧客の名前は出さない。あらゆるブランドとの提携を歓迎する」とのみ答えた。
郭 董事長は、インドでは▽携帯電話▽発光ダイオード(LED)バックライト搭載テレビ▽精密機械▽バッテリー▽ストレージ▽スイッチ▽ルーター──などの生 産や、データセンター設置を視野に入れていると説明した。その上で、インド企業とは携帯電話ブランド大手のマイクロマックスや、インターネット通販サイト 最大手スナップディールなどと既に提携関係にあり、財閥のアダニグループとも提携交渉中だと明かした。

 インド経済紙エコノミック・タイ ムズ(ET)によると、鴻海とアダニは合弁会社を設立する計画で、両社の出資額は50億米ドルとされる。当初はグジャラート州とインド南西部のカルナータ カ州に工場2基を建設し、タブレット端末、携帯電話などを生産するとみられる。鴻海はインドで携帯電話を約4億台生産し、うち半分をインド内需向けに充 て、残り半分を中東、アフリカ、ロシアなどに輸出する計画とされる。

 この他、ET紙によると、ソニーインド法人の日比賢一郎社長は、鴻 海孫会社が東部タミル・ナードゥ州の工場で、ソニー「ブラビア」ブランドの液晶テレビを生産することで合意したと明かした。当初はグーグルの基本ソフト (OS)「アンドロイド」を搭載した43インチモデル2種類を生産し、4日に第1弾出荷が始まった。今後製品は22~43インチモデルに拡大するという。 ソニーと鴻海はテレビ業務で長年提携関係にある。

 なお、鴻海がインドでソニーのテレビを生産することで、テレビ受託生産業界の勢力図が変化するとの見方が浮上した。仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)と緯創資通(ウィストロン)は4日、「今後、インド工場設置を慎重に検討する」とコメントした。

 また、鴻海傘下の液晶パネル大手、群創光電(イノラックス)は、インドのテレビ、パネル需要を好感し、鴻海と合弁でインドに第8.6世代工場の設置を計画しているとの観測が浮上している。

  イノラックスはもともと、インドでは後工程モジュール(LCM)工場の投資を計画していたが、鴻海のパネル需要が強まり、前工程のパネル工場の必要性が高 まったとされる。イノラックスの王志超総経理は以前、インドのナレンドラ・モディ首相を訪ね、投資計画の実行可能性を検証したようだ。

 ただ、ガラス基板投入枚数6万枚の8.6世代工場1基で計算すると、800億~900億台湾元(約3,100億~3,500億円)の投資が必要になる。ここ数年でやっと財務体質を改善したイノラックスにとって大きな負担となるが、それでも投資に踏み切るか注目される。