村田製作所はスマートフォン(スマホ)の通信関連部品を増産する。約120億円を投じて石川県の工場に新棟を建設する。通信関連部品はセラミックコンデンサーとともに世界シェアが高く、高収益体質を支える基幹製品。スマホの出荷台数は伸び悩みつつあるが、高機能化が進む。積極的な投資で1台あたりの搭載数が増えている高性能部品の需要を取り込む。
 村田が新棟を建設するのは生産子会社の金沢村田製作所(白山市)。高速通信などに必要な周波数帯の信号を取り出す「SAW(表面弾性波)フィルター」など通信関連部品やセンサーを増産する。11月に着工して来年9月の完成をめざす。子会社は今年度から5年間で約300人の従業員を採用し増産に対応する。



 スマホは高速通信サービス「LTE」など様々な通信規格に対応したり、国や地域で異なる周波数帯に1台で対応したりと高機能化が進む。このため に必要となるのがSAWフィルターだ。高機能機では1台あたりの搭載点数が低価格機の4~5倍にあたる15~20個以上に増えている。

 村田はSAWフィルターの世界シェアが約45%と高い。約35%あるセラミックコンデンサーとともに事業の2本柱だ。米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」シリーズといった高機能機に限るとシェアはさらに高いもよう。

 世界のスマホ出荷台数は最大の市場である中国が成熟期に入りつつあることなどを背景に伸びが減速しつつあるが、スマホの高機能化により部品出荷は堅調な需要が見込まれている。

  2016年3月期に2期連続で過去最高益を見込む同社にとって収益拡大のけん引役だ。村田は昨年以降、福井県や島根県の工場でセラミックコンデンサーの生 産棟を新設している。SAWフィルターの生産能力も16年3月期に前期比3割増強する計画を打ち出しており、高機能化による需要増に対応できる体制を整え る。