パソコンや液晶テレビなどには欠かせない部材である液晶パネルの内外の大口取引価格が21型以上の大型品を中心に急落している。中国やインドネシアなどの経済成長が鈍化し需要が伸び悩む一方で、パネルメーカーは中国勢が生産能力を増強し、大幅な供給過剰に陥っているためだ。メーカー各社はより採算が取りやすい大型パネルに生産をシフトして収益を確保してきたが、中国勢の参入でこれらの市場でも販売競争が加速している。パネルの値下がりは液晶テレビの店頭実売価格の下落による一定の需要喚起にはつながるが、メーカー各社の収益悪化は避けられそうにない。
「今はどこのメーカーも32型は採算割れなのでは」――。ある液晶パネルメーカーの営業担当者は苦笑する。



液晶パネルやDRAMといった電子部品は量産技術の進展など製造コストの低下で、新しい規格品が登場すると緩やかに値下がりをするのが一般的だ。ただ今年 はテレビ用を中心に下落ペースが速い。取引数量が多い32型(バックライトなどが付属しないオープンセル)の内外の取引価格は、8月分の大口向けで1枚約 75ドル前後の水準にある。9月以降も下げ傾向で推移している。年初からの下落率は約2割に達する。その他のサイズの大型パネルも需給緩和を背景に、総じ て値下がり傾向が続いている。

 価格下落が特に激しい32型の場合、その理由を中国勢の台頭に求める向きは多い。最大手の京東方科技集団 (BOE)などが生産ラインを増設し、夏以降これらが本格稼働したもようだ。ある業界関係者は「中国当局が国内のハイテク産業の成長を促すため財政的な助 成策を講じている。販売価格よりシェア確保を優先できる体制にある」と指摘する。

 米調査会社のIHSテクノロジーによると、2010年 に1%そこそこだったBOEの世界市場での生産能力シェアは15年に約10%、18年には13%まで伸びる見通しだ。他の中国メーカーと合計すると18年 のシェアは27%程度と、4割近くとみられる韓国勢に迫る見通しだ。

 供給能力が高まる一方で、直近の需要は伸び悩んでいる。中国景気の 減速に加え、米ドル相場高でインドネシアなどの通貨が対ドルで下落している。現地通貨建ての液晶パネル価格が上昇し、アジアを中心に需要が腰折れした格好 になっている。秋に入ってもパネルの荷余り感はなお続いている。

 中国メーカーの攻勢は32型にとどまらない。10月7~10日に幕張 メッセ(千葉市)で開催された国内最大の情報技術(IT)家電見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2015」で、BOEの展示コーナーの前に大き な人垣ができた。お目当ては98型、110型の超大型液晶ディスプレーによる高画質な映像再生だ。同社は「ライフスタイル・イノベーション部門」でグラン プリを受賞。価格競争力だけでなく技術面での進歩も印象づけた。

 主力となる「8.5世代」と呼ばれる液晶の生産ラインでは、32型のほ か、55型といった大型パネルの効率生産が可能だ。「歩留まりの改善など課題もあり、すぐには量産体制には移れない」(液晶パネルメーカー)との見方はあ るが、将来的にさらに大きなパネルの供給圧力は高まるとみるべきだろう。55型の液晶テレビの東京の家電量販店などの実売価格は10月中旬時点で20万円 台が中心だが、10万円台が普通の値段となる日は意外に早く訪れるかもしれない。