■質問:2015年のFPD市場を端的に言うと?

テレビ用大型パネルの供給過剰が顕在化した年になった。テレビ各社の生産計画は年初から強気で、積極的なパネル調達を実施した。しかし通貨安の影響により、春先から新興国でテレビなど各種製品は総じて値上がりして、セット需要が低迷し始めた。パネルの面積成長率は、結果として年初の見通しから数%下ぶれしたかたちになった。中国経済の低迷よりも、このドル独歩高のインパクトの方が大きいと考えている。だが、パネル各社は高い稼働率を維持し、パネル単価の下落を招きながらも、シェア維持のために生産にブレーキを掛けなかった。10月頃まで高い稼働率を維持し続けてしまった。

■質問:テレビ用・IT用大型パネルの供給過剰率は?



パネル需給がタイトだった2014年は10%だったが、2015年は12%まで高まっている。2016年には14%まで上昇し、少なくとも 2016年上期中は調整期間になる。2016年下期は一時的に過剰感が和らぐが、2017年も13%の過剰感が見込まれる。需給にバランス感を感じられる ようになるのは、2017年半ば以降だろう。

■質問:パネル各社の収益が悪化しそうですね。

主要パネルメーカーの営業利 益率は、2015年4~6月期が平均8%だったが、7~9月期は3%、10~12月期はブレークイーブンにまで落ち込むとみている。2016年もドル高傾 向が続くと、パネルの需要環境はすぐには好転しない。2016年は赤字を余儀なくされそうだ。

■質問:厳しい市況が予測されるなか、注視すべきポイントとは?

大型パネルに関しては、以下のポイントだ。

1)中国パネルメーカーの生産調整
2)台湾パネルメーカーへの影響
3)5Gラインの再編

1) について、中国最大のパネルメーカーであるBOEが大型パネルの量産を軌道に乗せたのが2012年。以降は需給環境が良かったため、中国パネルメーカーは これまで増産一本槍で事業を拡大できた。つまり、これから初めて本格的な調整期を経験することになるのだが、果たして生産のブレーキをいつ踏むのか未知数 だ。イニシャルコストやインフラコストなど政府からの援助に関して他国のパネルメーカーと競争の土台が異なるため、なかなか調整に入らないようだと、それ だけ他のパネルメーカーに与える影響が大きくなる。

■質問:これが2)につながるわけですね?

そのとおりだ。大きな内需 がなく、中国のテレビメーカーを主要顧客としてきた台湾パネルメーカーが、まず大きな影響を受ける。中国政府の方針は「自国で生産するテレビの8割に国産 パネルを搭載する」こと。内需がなく、中国国内にテレビ用パネル工場を持っていない台湾パネルメーカーは、大口顧客を失うことになりかねない。4Kで差別 化できている今はいいが、先行きは厳しい。台湾メーカーにも中国でテレビ用パネル工場を新設する計画が浮上しているが、これが稼働する時期まで顧客をつな ぎとめられているかは疑問だ。

■質問:3)については?

今後2~3年で5Gラインのシャットダウンが相次ぐ可能性があ る。これまで5GラインではノートPCなどのIT用やスマートフォン用パネルを生産してきたが、IT用パネルの需要低迷により、5Gラインの稼働率は総じ て低下している。そして大型パネルの供給過剰化により、IT用パネルの生産は6G以上へシフトしていく。さらにLTPSフルHD液晶の増産に伴って、5G ライン生産のスマホ用a-Si HDパネル需要は今後減少を余儀なくされていく。
すでにサムスンディスプレーは天安L5ラインを年内いっぱいでクローズすることを決めた。5G比率の高い台湾パネルメーカーでも、今後は同様の判断が下されるケースが出てくるとみている。

■質問:中小型パネル市場に関してはいかがですか?

同じく3つのポイントがある。

1)インセルの増加
2)サムスンの有機EL外販の本格化
3)中国・天馬微電子のLTPS液晶の立ち上げ

特 に2)3)が、ジャパンディスプレイやシャープといったLTPS液晶の先行メーカーに影響を及ぼし始めている。サムスンがA1ラインの償却を終え、A3ラ インが本格稼働したことで、有機ELの価格をLTPS液晶並みに下げ、中国スマホ向け外販ビジネスが一気に立ち上がった。上期は中堅ブランドから採用が始 まったが、現在はHuaweiなど大手ブランド向けでも実績を上げ始めた。また、装置導入からの立ち上げ期間、パネル生産歩留まり、高精細高品位パネル技 術などでは先行メーカーにまだ及ばないものの、天馬微電子がLTPS液晶の出荷を2015年第2四半期から本格化させ、LTPS液晶のコモディティー化が 始まった。サムスンの有機ELと中国・天馬微電子のLTPS液晶が競争相手となったことが、先行LTPS液晶メーカー3社の受注機会を徐々に削り始めてい るようだ。

■質問:LTPSの高解像度化も4Kまで止まるのではないかと言われていますね。

有機ELでは中国のエバー ディスプレーが量産拡大に積極的であり、2017~18年にはLTPSも有機ELもフルHDクラスのコモディティー化が一気に進む。先行メーカーにはこれ に対抗する戦略が必要だが、簡単ではないだろう。いずれにせよ、中国パネルメーカーの投資熱はやまない。世界のパネル生産能力は、今後2018年まで年率 6-9%で拡大し続ける見通しだ。中国におけるパネル生産能力が、2017年には台湾、2018年には韓国を追い抜く見込みだ。いつかは来ると言われてき た「中国インパクト」がついにやって来た。これに伴って、部材メーカーの中国展開がいっそう加速することも大いに予測される状況になった。