netアップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」の発売を機にスマートウオッチに大きな注目が集まり、関連ハイテク企業の株価は上昇している。ただ、スマートウオッチの「快進撃」は続いても、伝統的な高級時計メーカーに大きな脅威を与えることはなさそうだ。

非接触決済サービスなど、近距離無線通信(NFC)向け部品を製造する半導体メーカーのオーストリアマイクロシステムズ(AMS)や、衛星利用測位システム(GPS)製品を手掛けるユー・ブロックスなどのハイテク企業は、スマートウオッチの好調な売れ行きの恩恵を最も受けている。両社の株価は今年は年初から10%近く上昇している。



アップルの端末発表を受け、「腕時計型パソコン」とも呼ばれるスマートウオッチの市場に他の時計メーカーも参入。仏高級ブランドLVMH(モエ・ ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下のスイス高級時計メーカー、タグ・ホイヤーは、米グーグルおよびインテルと共同開発したスマートウオッチを発表した。一 方、米フォッシル(FOSL.O)はウエアラブル技術のミスフィットの買収計画を明らかにした。

しかし、スマートウオッチがスイスのリシュモンなどが参加するハイエンド時計市場に大きな影響を与える可能性は、少なくとも短期的にはないとみられる。

ベ レンバーグのアナリスト、Zuzanna Pusz氏は、高級時計とスマートウオッチとは全く異なる種類の時計であるとし、「(スマートウオッチが)スイスの大手メーカーにとってリスクになるとは 基本的には考えていない。時計はステータスシンボルで、ハイテク製品とは違い価値は変わらない」と指摘。ポジティブな面としては、「新しい世代は時計を身 に着けることにそれほど関心を示さないかもしれないが、スマートウオッチを使用すれば、いつかはスイス製の高級時計に変えることもあるかもしれない」と 語った。

スイスの時計大手スウォッチ・グループは、1000ドル以下の商品も多く展開しており、スマートウオッチの台頭のマイナス影響を受ける可能性がある。ただアナリストらは影響があったとしてもわずかにとどまるとみている。

アビエイト・グローバルのアナリストでパートナーのポール・モラン氏は「需要は急に変わるのではなく、ゆっくりだが着実に変化していく」と指摘し、タグ・ホイヤーの参入を受け、スマートウオッチの需要は高価格帯にも届いてきたと述べた。

その上で「スウォッチは(スマートウオッチの需要拡大を)真剣に受け止めず他社との連携を拒否してきた。だが同社の方針は持続不可能だろう」との見解を示した。

スウォッチ株は今年に入り20%近く下落。アナリストによると、同社はアジアでの売上高の落ち込みや業績をめぐる懸念に直面している。

そのスウォッチも来春、スイスで決済可能なスマートウオッチの市場投入を計画している。アップルに対抗して多機能のスマートウオッチを開発するよりも、異なるモデルに個別のハイテク機能を搭載する戦略のようだ。

世界の高級時計市場の規模は約400億ドル。一方で2015年のスマートウオッチ市場は、アップルウオッチの発売もあり、成長率が600%近くとなる見通し。しかし高級市場との比較では、依然として極めて小規模な存在となっている。