タコ足食い経営再建中のシャープが国内外の全社員を対象にした数値目標つきの「自社製品購買運動」を呼びかけ、社内の一部で反発を招いている。今月20日から来年1月下旬までにシャープ製品の購入を要請し、一般社員には5万円を「目標」が設定された。強制ではないが「全社的な取り組み」としている。社員には新たな負担になりかねず、士気に影響しかねない。

 「社員が買い支えるということは、経営を見誤り、在庫を積み上げた人間の失敗を覆い隠してしまうことだ」

 「シャープの退職者」を名乗る人物から、経営陣の責任を追及する記述がブログ「シャープの中からの風景」に投稿された。



このブログは、現役社員が社内からの視点で運営しているとされ、注目されている。実際、社内の情報が書き込まれることが多く、今回の購買運動に関する投稿 は報道の2日前の16日から相次いでいる。この投稿者は「失敗の原因となったやり方考え方を変える機会を失い、また同じ失敗を繰り返してしまう」と書き込 んでいる。

 家電や太陽電池事業を統括する長谷川祥典専務執行役員が16日付で社内に通知し、「当社は大変厳しい状況にある。絶大な協力 を」とのメッセージが添えられた。購入の「目標」として役員級20万円、管理職10万円、一般社員5万円と設定されており、年末商戦を社員が底支えする狙 いとみられる。

家電メーカーには、どこでも自社製品の従業員販売推奨制度はある。シャープでも数十年来、「バイシャープ」と呼ばれる自社製品購買運動を続けていた。購入を決めた社員がシャープ製品の品名を書いた帳票を書き、シャープと提携している販売店に持っていくと品物が受け取れる仕組み。代金は給与から天引きされていた。販売店は近年、大型量販店の台頭で数が減少し、バイシャープ運動は形骸化していったが今年、経営危機のなかで「バイシャープ」が危機感をもって連呼されるようになった経緯がある。

 経費削減ですでに給与や賞与がカットされるなかで自社製品購入の目標設定は社員への精神的な負担となりそうだ。広報部は「目標数字は強制でなくお願い。ノルマではない」と説明するが、社内ネット経由で販売するため、どの社員が購入したか、あるいはしていないかの記録は残る。

 すでに自社製品を使用している社員も多く、「商品を末永く使っている社員に新しい商品をオフィシャルに進める(原文まま)のは今の時代、環境から考えて間違っているような気がする」(同ブログ)と疑問の声もある。

 今回の買い支え策の売り上げ効果は数十億円とみられる。シャープの売上高規模からすればプラス効果は限定的だ。かきいれ時の年末商戦を勝ち抜くため、負担を強いられ続ける社員の士気を上げる新たな策も求められそうだ。