シャープ買収を決めた鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長がこのほど、シャープのIGZO(酸化物半導体、イグゾー)に期待感を示したことで、同技術が再び注目を集める中、今年のタブレット端末用IGZOパネルの出荷枚数は2,000万枚へと昨年の約4倍に増加するとの予測が、市場調査会社のウィッツビュー・テクノロジーから示された。アップルが3月に発売したIGZOパネル搭載の「iPad Pro」(9.7インチ)がけん引するとの見方で、鴻海はシャープ買収メリットを享受できそうだ。13日付工商時報などが報じた。



低消費電力のIGZOパネルは、高輝度・高精細のLTPS(低温ポリシリコン)パネルよりもコストが低く、シャープ、サムスン電子、LGディスプレイ (LGD)が量産している。鴻海の郭董事長は2日のシャープ買収契約記者会見で「1年あればIGZOと有機EL(OLED)の応用製品の比率を6:4に逆 転できる」とも語っていた。

 ウィッツビューによると、アップルは昨年発売した12.9インチのiPad Proで、初めてタブレットにIGZOパネルを搭載。シャープが独占供給した。昨年のタブレット用IGZOパネル出荷枚数505万枚のうち、iPadシ リーズ向けは約330万枚と世界需要の65%を占めたが、今年は1,800万枚と90%を占めるとみている。

 ウィッツビューは、9.7インチと12.9インチのiPad ProがIGZO需要を高め、同技術の導入コストを押し下げたと指摘。タブレット市場におけるIGZOパネルのポテンシャルは価格の低下に伴い高まるとみる。

 ウィッツビューはまた、アップルは今年下半期に発売するノートパソコン「MacBook」の新製品にもIGZOパネルを採用する可能性があると予想した。アップルはiPad ProがIGZOパネル需要を押し上げる中、同パネルの安定生産実現に期待を寄せているという。

  アップル以外では、マイクロソフト(MS)が昨年発売した12.3インチのタブレット「Surface Pro 4」にIGZOパネルを採用した。昨年のIGZOパネル出荷のうち、MS向けは170万枚と全体の34%を占めた。ただ今年は「Surface Pro」シリーズの販売見通しが微妙なため、MS向けは200万枚と小幅増にとどまり、IGZOパネル市場に与える影響力はアップルよりはるかに小さくな る見通しだ。

 ウィッツビューは、タブレットの販売台数が減少する中、アップルとMS以外のメーカーはコストを気にして新技術採用に踏み 切れないほか、シャープ、サムスン、LGDのIGZOパネル生産能力がほぼアップルに押さえられている状態で、今年はアップルとMS以外のメーカーによる 同パネル採用は進まないとの見方を示した。
 鴻海が約4割出資する中小型パネルドライバICの天鈺科技(Fitipower)と、38.7%出資 する産業用コンピューターの瑞祺電通(Caswell)が、それぞれ今年の上場計画を撤回したと伝えられた。市場では、両社はシャープ、または鴻海と シャープが共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP)に統合され、海外上場を目指すとみられている。

 中小型パネルのうち、鴻海はアップルのスマートフォン「iPhone」向けの受注を最も重視している。天鈺科技の法人代表は鴻海の載正呉副総裁が務めており、天鈺科技とシャープの統合を進めやすいとされる。

 瑞祺電通はネットワークセキュリティーに注力しており、鴻海とシャープが強化するモノのインターネット(IoT)、インダストリー4.0(第4次産業革命)に関わる分野だ。瑞祺電通がシャープのサプライヤーとなる可能性が指摘されている。

  アナリストは、天鈺科技、瑞祺電通とシャープ、SDPとの統合により、鴻海はパネル、インダストリー4.0事業での垂直統合を進められると指摘。また両社 を海外上場させることで、取引量の乏しい台湾株式市場よりは資金を調達しやすくなるメリットも挙げた。今後は群創光電(イノラックス)も統合するかに注目 が集まっている。