テレビ向け大型液晶パネルの取引価格がおよそ1年2カ月ぶりに下げが一服した。採算が悪化した国内外のパネルメーカーの生産調整が進み、メーカー各社は指標品種の32型などの安値取引解消へ値上げに動いている。需要は盛り上がりを欠くが、最終製品のテレビの値下げ販売が減るなどの影響も出てきそうだ。

 取引量が最も多い32型の大口需要家向けの4月納入分の出荷価格(バックライトなどのつかない半製品)は1枚50~55ドル前後。2015年末に比べ16%ほど安いが、3月納入分とほぼ同水準だ。50ドルを下回る価格帯ではパネルメーカー側の値上げ要求を受け、1~2ドルほど上昇した事例もみられる。40型も85ドル前後と3月から同値圏にある。



 市場の拡大が見込まれる50型以上のパネルは依然としてメーカー間の販売競争が激しく、値下がりは止まっていない。20型以上のパソコン向けも需要の落ち込みが大きく、取引価格も下げ傾向にある。

  テレビ向け液晶はドル高の影響で中国など新興国で割高感が強まり、テレビ用需要が落ち込んだほか、京東方科技集団(BOE)など中国勢の供給拡大が続い た。15年は1年間で3割以上値下がりした。シャープなど国内勢や韓国勢は生産を抑制したが、年明け後も下げ基調が続いていた。

 ただ32型はメーカー各社の採算を大きく割り込む水準まで低下。増産を続けていた中国勢も、ここにきて減産を始めたもようだ。

 一部パネルメーカーの新製品の歩留まりの低下や、地震で被災した台湾の群創光電の一時的な生産減も重なり、市場全体の供給量はフル稼働時に比べ1割弱減ったもよう。液晶テレビはパネル安による値下がりで一定の需要があり、4月に入り急速に需給引き締まり感が広がった。

 パネルメーカー各社は赤字販売の解消に向け需要家への値上げ姿勢を変えていない。供給過剰感の後退で、買い手側からも「5月以降は値上がり基調が強まりそう」(日本の中堅家電メーカー)との見方が多い。

  パネル価格の下げ止まりは液晶テレビの実売価格にも波及しそうだ。調査会社BCN(東京・千代田)によると、3月の液晶テレビの家電量販店の平均販売価格 は1台6万6400円と15年末から1割強下落した。家電メーカーの安値で仕入れたパネル在庫がなくなれば、32型を中心に実売価格が下げ止まる可能性も ある。