鴻海精密工業が買収するシャープは12日、載正呉・鴻海副総裁(64)をはじめ鴻海が推薦した6人を含む9人の新役員人事を発表した。また鴻海傘下の群創光電(イノラックス)は同日、IGZO(酸化物半導体、イグゾー)技術で生産したアクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)パネルを展示した。パネル強化で鴻海グループの底上げを図る郭台銘(テリー・ゴウ)董事長の姿勢が鮮明に現れた。13日付工商時報などが報じた。
シャープの新役員は、6月23日の株主総会、鴻海による払い込み完了後に就任する。払い込み期限は10月5日だが、両社は6月末までの実施を見込んでいる。



 載氏は1985年に鴻海に入社し、富士康精密組件(深?)の董事長などを歴任、05年に副総裁に就任し、郭董事長に次ぐナンバー2となった。慎 重で我慢強く、厳格で責任感の強いリーダーとして知られ、「鴻海の徳川家康」との異名を持つ。また、日本留学経験があり、日本語も流ちょうで、「ミス ター・ジャパン」というニックネームもある。ソニーのゲーム機受注、シャープと共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP)など、鴻海の日本市場開拓 に貢献してきた。

 4月2日の契約は郭董事長が見守る中、載副総裁とシャープの高橋興三社長が調印した。郭董事長は当初、日本人をトップ に据えると話していたが、規律が厳しい「日本スタイル」の載副総裁がシャープの早期再建に適任と考えたようだ。シャープ100年の歴史で初めての外国人社 長となるため、日台の企業文化の融合が最大の課題となりそうだ。

 シャープは同日、15年度決算について、連結売上高が前年比11.7% 減の2兆4,600億円、営業損失1,620億円、純損失2,560億円と発表した。2年連続で2,000億円を超える大幅赤字となった。ディスプレイデ バイス事業は売上高が前年比14.9%減の7,715億円で、1,291億円の営業損失を計上した。債務超過に転落したため、シャープは8月1日付で東証 1部から2部に降格する。外電によると、郭董事長はシャープの従業員に対するメールで、業績が悪過ぎたので、人員削減の必要があると表明した。当初「雇用 は守る」と宣言していたが、前言撤回となりそうだ。

 一方、鴻海は12日、1株当たり5台湾元(約17円)の配当を発表した。07年以降で最高で、潤沢な資金力を見せ付けた。第1四半期の純利益は275億7,600万元で、前期比47.9%減、前年同期比9.2%減ながら、同期としては過去2番目に高かった。

 イノラックスは同日、段行建董事長が定年退職し、王志超総経理が董事長を兼任すると発表した。

  今後SDPに勤務する段氏は、役職は分からないとしつつも、パネル産業での長年の経験を生かしてシャープの競争力を引き上げ、ウィンウィンを創造したいと 語った。段氏は、台湾パネルメーカーはシャープの革新力から、シャープはイノラックスの管理や自動化から学ぶことができると指摘。自動化、技術、投資での 協力が自身の今後の仕事となり、「日本語の練習や、居酒屋での飲酒など準備を始めた」と話した。

 またイノラックスは同日、独自開発したIGZO技術で、早ければ年末か来年第1四半期に量産を開始すると説明した。月産能力は2万枚で、当初は8~12インチのタブレット端末、ノートパソコン用の中型パネルが中心となる。

  イノラックスは、IGZOパネルは既に認証を通過し、現在は苗栗県竹南と台南市の第5世代生産ラインを変更している最中だと説明した。投資額は10億元 で、LTPS(低温ポリシリコン)パネル生産ライン2本の500億元より大幅に安いと指摘した。郭董事長はこれまでも、IGZOはサムスン電子の AMOLEDより競争力があると高く評価している。AMOLEDパネルは早ければ18~19年に量産する予定だ。


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