ロボホン
シャープが経営危機に陥った原因については、「垂直統合型というビジネスモデルへのこだわり」と、それにともなう「液晶パネル生産設備、とりわけ堺工場への過剰投資」がよく指摘されるが、本当だろうか。 筆者は、そのような見方が的を射ているとは思わない。以下で検証していこう。
垂直統合モデルはシャープが苦境に陥った根本原因ではないと筆者は考える。このビジネスモデルは、確かに投資負担は大きいものの、より多くの付加価値を取り込み、技術ノウハウのブラックボックス化を図るための定石戦略だからだ。
つまり、世界の競争相手に目を向ければ、これまでのシャープの投資規模は、堺工場への投資を含めても決して過剰ではなく、むしろ過小であったと考えられる。


そもそも設備集約型事業は、安価な労働力や電力費などが決定的な競争優位をもたらす事業と異なり、事業戦略次第で国内立地でも競争力を確保できるはずだ。後述する製品企画開発力を取り戻すことができれば、国内での垂直統合モデルは十分可能である。
グローバル液晶パネルベンダーへのビジネスモデルの転換には、シャープ製パネルを長期購入するテレビメーカーやパネルメーカーを増やすエコシステム、いわば「シャープ陣営」の形成が求められる。テレビ市場で競合する企業にパネルを販売するという、難易度の高いモデルであり、顧客との信頼関係や人的ネットワーク、いわゆるソーシャル・キャピタルの醸成が欠かせない。 このモデルのこれまでの成功事例は、半導体および液晶パネルの大手メーカーであり、かつ薄型テレビとスマートフォンの世界最大手に君臨するサムスン電子だろう。
シャープは当時、国内の大手テレビメーカーである東芝、ソニーとパネルの供給で矢継ぎ早に提携した。これは、シャープ陣営形成に向けた正しい戦略だった。 しかし、やがて東芝とソニーはシャープとの提携を解消する。一部では、シャープが家電エコポイント制度などの特需で品薄の大型パネルを自社テレビ向けに優先的に振り分けたため、両社の反感を買ったとの報道もあった。
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