モバイル機器用ディスプレーとして現在使われている有機ELや透過型液晶は、屋内ではよく見えるが、太陽光下の明るい屋外では見えにくくなる。しかも、モバイル機器の電力消費の多くを占める。こうした課題の解決策として、有機ELと反射型液晶を組み合わせたハイブリッド型のディスプレーを半導体エネルギー研究所が開発した。現在開催中のディスプレーの学会「SID 2016」で発表した(発表番号:7.2)。同社はこのディスプレーを「TR-Hybrid Display」と呼ぶ。TはTransmissive OLED、RはReflective LCを示す。

 このハイブリッド型ディスプレーは、反射型液晶の反射電極の一部に穴を空け、そこから反射型液晶の裏側に貼り付けた有機ELの発光が透過する構造を持つ。



 製造技術には、フレキシブル有機ELディスプレーの剥離技術を応用した。まず、搬送用ガラス基板上に剥離層を塗布し、その上にTFTを形成する。さらに、TFT側に光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子を形成し、平坦化膜で覆って、上からガラスを載せる。その後、剥離層を剥がして、搬送用ガラス基板を取り去る。次に、ガラス基板を取り去ったTFT側に液晶のカラーフィルター基板を貼り合わせ、液晶材料を注入する。

 試作したディスプレーの画面寸法は4.38型、画素数は768×1024。精細度は292ppi。開口率は液晶が76%、有機ELが3.9%。より低消費電力のディスプレーにするために、低周波駆動が可能で有機ELの駆動も可能な酸化物半導体IGZOをTFTに用いたとする。通常の60Hz駆動に対して、例えば1/3Hz駆動にすることで、反射型液晶の消費電力を約1/180に減らせるとする。

 さらに、駆動方法の最適化を図った。これにより、有機ELの表示コントラストを1111対1から2850対1に改善したという。有機ELと反射型液晶は独立に駆動する。有機ELの各画素(サブピクセル)にはトランジスタ2個とキャパシタ1個、液晶の各画素(同)にはトランジスタ1個とキャパシター1個を設けている。