高精細化に不可欠な製造装置を手がけるキヤノントッキは、各パネルメーカーからラブコールを浴び、一部装置は納入まで2年待ちとなるほどの大盛況だ。
 同社は有機ELが世に知られるはるか昔、20年前から装置開発に取り組んできた。長い我慢の時期を乗り越えた今、津上晃寿会長兼CEO(最高経営責任者)に心境を聞いた。
当社の装置への引き合いも強く、生産体制が全く追いついて無い状況です。パネルメーカーのトップが直接交渉に来ることもあります。需要に対応する生産体制を整えるのが義務だと考えています。  
韓国のサムスンディスプレーが有機ELで中小型パネルを早くから開拓してきて、最近になって生産歩留まりがかなり良くなってきました。
生産コスト面で液晶パネルと勝負出来るレベルになってきたことが、有機ELへのシフトを促しているのでしょう。


市場が立ち上がるまで、装置が売れない時期が長くありました。

津上:当社は有機ELの製造で、パネルに発光材料を気化させて付着させる蒸着装置を20年以上手がけ、韓国の顧客と一緒に技術を作り上げて世界初のパネル量産化を成功させた実績があります。  しかし、先代(創業者で父の津上健一氏)が事業を開始した当初を振り返れば、有機EL市場が立ち上がる可能性は全く見えておらず、一種の賭けだったのだと思います。
 装置1台当たりの価格も非常に高いため、売上高の波も非常に大きく、赤字続きの事業でした。2004年に一部の電子機器に有機ELディスプレーが搭載され、期待が高まりましたが、大きな需要は生まれませんでした。それから10年以上。苦労が長かった分、ようやく報われたという安心感よりは、次の市況変化に対する警戒心の方が今は勝っています。
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