smart phone oled lcd trend韓国サムスン電子は2016年に8兆ウォン(約7200億円)程度を投じて有機ELパネルの生産設備を拡充する。スマートフォン(スマホ)用パネルに換算すると2億数千万枚分で現状より5割超増える。米アップルや中国メーカーへの供給体制を整える。最大手の大規模増産でスマホパネルの液晶から有機ELへの移行が加速。画面が鮮明で多様なデザインのスマホの普及が進みそうだ。

アップルは有機ELスマホを出す時期を部品メーカーに伝えていた18年から、一部機種は17年に前倒しする計画。有機ELパネル市場をほぼ独占するサムスンに供給を打診したもようだ。

 子会社サムスンディスプレーが韓国・湯井に持つ工場を拡充する。16年の設備投資はパネル全体で10兆ウォン程度で、約8割を有機ELに充てる。過去3年は液晶と有機ELの合計で年平均5兆ウォン弱を投じた。現在の有機ELの生産能力はスマホ用換算で年3億枚を大きく上回るとみられる。
 サムスンのスマホ「ギャラクシー」は販売台数が世界1位で、2位のアップルの「iPhone(アイフォーン)」と競合するが、アップルは半導体 メモリーなどの部品事業の顧客でもある。スマホに並ぶ収益源である部品事業を拡大するとともに、注力する有機ELの市場を拡大させる。






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 有機ELパネルはガラスを使わない基板もあり、曲面などに加工しやすく、商品デザインの自由度が高まる。液晶より発色が鮮やかで視野角が広く見やすい。一方、寿命が短いなどの課題が残る。

 サムスンは自社のスマホの大半で有機ELを採用し、量産ノウハウを蓄積。生産コストは液晶並みに低下しているようだ。サムスンの大型投資は競合のパネルメーカーの脅威になりそうだ。

 液晶世界最大手のLGディスプレーは今後数年間でテレビ用などを含めて有機ELパネルの増産に10兆ウォン超を投資。スマホ用にも参入する。ジャパンディスプレイは500億円を投じて17年春に有機ELの生産ラインを新設。18年以降に本格量産を始める。

 アップルが有機ELを採用することで、ほかのスマホメーカーが追随する可能性がある。だが、今回のサムスンの増産規模は15年の自社のスマホ販売台数3.2億台(推計値)と比べて大きく、巨額の投資負担が収益の重荷となるリスクがある。