経営再建中のシャープを買収する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は22日、台湾北部・新北市の本社で株主総会を開いた。郭台銘(英語名テリー・ゴウ)会長は冒頭、シャープの買収について「今月中には必要な手続きをすべて終える。シャープと鴻海は補完関係になり、1+1は2ではなく、3にも5にもなるシナジー(相乗効果)がある」と意義を強調した。

 鴻海本社には日本と台湾から報道関係者が詰めかけ、株主総会会場の様子を中継するテレビモニターの前には10台以上のテレビカメラが並ぶなど、関心の高さをうかがわせた。

 鴻海によるシャープの買収案件そのものは総会の承認を必要としてない。鴻海は、23日に開催されるシャープの株主総会で新経営陣などが承認されれば、6月末までにシャープへの3888億円の出資を完了し、子会社にする予定だ。



 出資完了後は郭会長に次ぐ鴻海ナンバー2の戴正呉副総裁がシャープの社長に就く予定で、鴻海主導で早期の経営再建を目指す。

鴻海は有力メーカーから製品の組み立てを請け負う電子機器の受託製造サービス(EMS)の最大手として業績を伸ばしてきたが、足元では製造を受託している米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売減速などの逆風にさらされ、高成長に陰りが見え始めている。鴻海はシャープの商品開発力を取り込むことで事業領域を拡大し、成長軌道の維持を狙う。

 総会会場に向かっていた株主の会社経営者の男性(36)は「アップルからの受注獲得に関心がある。シャープ買収は長期的には業績にプラスになると思う」と肯定的にとらえていた。鴻海の株を長年保有し、シャープ株も取得したという男性株主は「シャープは研究開発はうまいが、コスト削減が弱い。鴻海の投資でシャープの株価も上がる」と期待を示した。