経営再建中のシャープは23日、大阪市内で株主総会を開いた。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業からの出資を受け入れるための新株発行や新経営陣の選任など6議案を提案し、すべて賛成多数で承認された。鴻海は月内にも計3888億円の出資を完了し、シャープ株の66%を取得する。
国内大手電機メーカーが初めて外資の傘下に入り、立て直しを図ることになる。総会には昨年より183人少ない1029人の株主が出席し、所要時間は過去最長の昨年と並ぶ3時間23分となった。



 総会の冒頭、高橋興三社長が2期連続の赤字と4年間の無配当について、役員全員を起立させたうえで「期待に応えられず誠に申し訳ない。深くおわび申し上げる」と陳謝。鴻海による買収については「鴻海との戦略提携で再生と成長に向けた取り組みを加速させる。一層のご支援をお願いしたい」と理解を求めた。

 株主質問では鴻海による買収に質問が集中。鴻海首脳がシャープ人員を7千人規模で削減する可能性を示唆したことに対し、橋本仁宏取締役常務執行役員は「生産体制や人員適正化は全世界で検討する必要があるが、現時点で決まったものはない」と述べるにとどめた。また、鴻海傘下で経営に当たる野村勝明副社長は「シャープの名前は残る。鴻海の生産力や顧客基盤を生かし、全世界での製品販売を強化する」と強調した。

 鴻海からの出資完了後に高橋社長は退任し、鴻海の戴正呉副総裁が社長に就く。鴻海傘下でのシャープ新経営陣は、鴻海が取締役9人のうち6人を指名している。

 現経営陣がほぼ退陣する節目の総会とあって株主の関心も高く、午前8時半の開場前には行列ができた。シャープ株を40年来持つという西宮市の無職、沖野武夫さん(70)は「鴻海は受託製造販売大手だが、シャープのブランド価値を理解していない。(鴻海からの)約束が二転三転しては従業員も不安になり、消費者もシャープを信頼できなくなる」と疑問を呈した。