経営再建中のシャープは23日、大阪市内で株主総会を開き、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収案を議決した。出資後に鴻海の戴正呉副総裁がシャープの社長に就くなどの取締役案も承認された。出席した株主からは、シャープの偶発債務を巡る対応など買収の交渉過程についての疑義が相次いだ。

株主総会では鴻海など4社が引き受ける計3888億円の第三者割当増資が決まり、鴻海などは議決権の66%を握ることになる。独立企業のシャープとして「最後」となる今回の総会では、二転三転した買収交渉の経緯などについて株主から疑問や批判が多く出た。
 

 「こんなざまにしたのは皆さんのせいだよ」。最初の質問者は厳しいセリフで高橋興三社長ら壇上の役員を糾弾した。シャープOBだというこの男性は、将来の負担になりかねない偶発債務問題について「都合の悪いものを(買収の)話が決まってから相手に出すのはまずいんじゃないか」と指摘。当初計画から「出資額が1000億円も値引きされた」と批判した。

 シャープ側は偶発債務の伝達時期がずれたのは、買収を競っていた官民ファンドの産業革新機構に比べて資産査定で鴻海が遅れていたためとする。高橋社長は「(資産査定では)鴻海が最後の1週間でバタバタ追いついた」などと説明した。「隠したままでは出資自体がなくなる可能性があった」とも明かした。

 鴻海が実際に出資するかどうかを疑問視する声もあった。鴻海の郭台銘董事長は22日に台湾で開いた鴻海の株主総会で、出資は「今月中にすべて完了する」と発言。ただ、実際に出資金が払い込まれるには、中国当局による独占禁止法の審査を通過する必要がある。高橋社長は「近日中にと思っている」と時期についてははっきり言及しなかったものの、出資は問題なく実施されるとの見方を示した。

 出資されなかった場合に鴻海がシャープの液晶事業を買い取れる条項を、「(契約から)削除してほしい」と何度も求める株主もいた。シャープ側は「出資に向け全力を挙げている。できなかったらということは想定しない」などとかわした。買収交渉についての株主の疑問がすっきりと晴れることはなかった。

 鴻海によるシャープ再建の具体策も示されず、今後の再生シナリオが見極められないもどかしさも株主には漂った。シャープは通常の定時株主総会に加え、5月15日時点の株主を対象にした総会も別途開いた。鴻海と買収契約を結んだのが今年度に入ってからだったためだ。開催時間は合計約4時間半に及んだ。

 次期社長の戴氏は22日、「効率化のためにあらゆることを検討する。シャープは金持ちの子ども(浪費家)だから、経費をカットしていく」と述べた。大量の人員削減や東京支社の一部移転など、コスト削減の圧力が目立つ鴻海。シャープの弱みだった海外営業の立て直しや液晶事業への大型投資に踏み切る方針だが、再建が軌道に乗るにはなお時間がかかりそうだ。