台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のシャープが「日の丸連合」の結成を呼びかけた。シャープ再建のために鴻海から派遣された戴正呉社長が29日、日本経済新聞などの取材に対し、「中国、韓国勢と競争できるよう、日の丸連合を作ろう」と述べたのだ。株式市場では、ジャパンディスプレイ(JDI)、シャープの株価がともに上昇。投資家の期待は高まったが、JDIは「何も聞いていない」とつれない反応。日の丸連合構想が動き出すには、いくつもハードルが待ち構えている。



  戴社長が日の丸連合を結成する目的はただ1つ。これからスマートフォン(スマホ)向けのディスプレーの主流となるとみられている有機ELパネルの開発だ。米アップルなど世界中の有力メーカーは有機ELの採用に動き出しており、シャープがディスプレー事業を立てなおすには必要不可欠なビジネスである。

 有機ELは、戴社長をシャープに送り込んだ鴻海にとっても今後の成長のカギを握る。主要顧客であるアップルとのビジネスを深めていくには、有機ELが手元にあった方が有利。鴻海がシャープに出資したのも、シャープが持つディスプレー関連技術に引かれたためだ。

 世界の有機EL市場を眺めてみると、韓国のサムスン電子やLGディスプレーの2社が大きく先行している。「有機ELスマホ」の時代にも、日本のシャープとJDIがアップルの主要サプライヤーであり続けられるかは不透明になってきているが、戴社長の計算通り、日の丸連合が結成できるとすれば、結末は大きく変わるだろう。

 JDIとシャープが技術資源を持ち寄り、有機ELの開発スピードを一気に上げられる。開発費用の負担を軽減できるメリットもあり、韓国勢などに対する競争力が高まるのではないか。そんな見通しからか、株式市場は戴社長の発言に反応した。

 29日の東京株式市場では、JDI株が一時、前週末比で13%高の158円まで上昇。発言が伝わった昼すぎからシャープ株にも買い注文が膨らみ、株価は一時、3%上昇した。


 しかし、市場の期待とは裏腹に、日の丸連合の実現性は不透明感が強い。

 「協業の検討はしていない」。JDI側は29日、戴社長が漏らした日の丸連合構想のニュースが伝わると、淡々とした反応を示しており、シャープとJDIが手を組むシナリオが実現するかは見通しにくい。

 懸念の1つはシャープとJDIの間にしこりは残っていないか、という点だ。JDIが発足する際は当初、シャープも合流する話があったが、結局、シャープは独自路線を選んだ。そのときから、JDIとシャープはライバル関係が続く。

 そして、JDIの筆頭株主である官民ファンド、産業革新機構とシャープとの関係も微妙だ。そもそも、シャープの筆頭株主である鴻海と革新機構は今年に入り、シャープを巡って激しい買収合戦を繰り広げていた。

 戴社長が29日の取材で口にした「日の丸連合」とは、革新機構がシャープ買収後にJDIとともに描いていたシナリオだった。シャープを巡って争った革新機構とJDI、鴻海とシャープが歩み寄ることは、簡単なことだろうか。

 もう1つは、シャープとJDIの協業が独占禁止法の観点からどうみられるかという問題だ。英調査会社のIHSテクノロジーによると、両社の中小型液晶パネルの世界シェアは34.8%に達する。両社の協業に「待った」をかける国が出てくれば、せっかくの構想も時間とともに色あせていく。

 「日本の液晶の人材が全部集まって開発しましょう」。戴社長はこんなラブコールを送ったが、降ってわいた「日の丸連合」構想の行方は混沌としている。