鴻海による買収の過程で、大阪・西田辺から堺市に移ったシャープ本社。午前8時の会議の前に、本社と同じ敷地内にある神社から、かしわ手を打つ音が聞こえる。しっかりと2礼2拍手1礼し、安全を祈願するのは、8月13日にシャープ社長に就任した戴正呉(65)だ。台湾時代からの習慣は日本で働く今も欠かさない。
「こんな細かい制度まで知っているのか」。8月下旬のシャープの経営戦略会議の直後、社員からはこんな声が漏れた。戴が「現状のローテーション制度は廃止する」と打ち出したからだ。「ローテーション制度」とは、若手社員が3つの部門を経験する人事慣行のこと。特定分野に精通する「I型」の人材よりも、専門以外の分野にも知見を持つ「T型」の人材を育てる狙いだ。


8月12日の鴻海によるシャープ出資から、ちょうど2週間後の8月26日に発表された組織改革の目玉は、その戴を支える「社長室」の新設だった。ある社員は「社長室はまるで首相官邸、社長室長は官房長官だ」と話す。役員秘書を束ねたり、経営企画を担ったりするだけでなく、鴻海がシャープの権限を掌握する舞台装置であるためだ。
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