台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で経営再建中のシャープが、戴正呉社長の就任から1カ月を迎えた。日本の大手電機メーカーでは初めての外国企業 による再建に注目が集まるが、具体策はまだ定まっていない。組織改編を推し進める戴社長だが、液晶パネル事業の立て直しで焦りをにじませる場面もあった。

 戴社長はこの1カ月、家電、電子部品、複合機、液晶、太陽電池-と多岐にわたる事業の把握に努めてきた。関係者は「幹部は社長の問い合わせにテレビ会議などですぐ応じるよう厳命されている」と話す。

  8月13日の就任時に戴社長が社員へ向けて発信したメッセージでは「信賞必罰」を強調。管理職の降格も含む厳しい成果主義を示した。約2週間後には組織改 編に着手。200人規模の社長室を新設し、構造改革、人事、広報担当、省庁との渉外担当などを手元に置いた。また事業責任明確化のため、5カンパニー制を 10事業本部体制に再編した。



ただ、鴻海による出資完了が遅れたことから、9月に入っても再建計画はまだ策定途上だ。それでも戴社長は、平成30年3月期の黒字化を念頭に「(当初目標の)2年以内よりも早く黒字化したい」と意欲をみなぎらせている。

 「このままでは韓国勢にやられてしまう。国の資金で、シャープや他社が“日の丸連合”で使える(次世代パネルの)有機ELの新しいプラットホームをつくるべきだ」

 ライバル企業との共同開発が報じられた翌日の8月30日朝、戴社長は記者団を見るなりこう訴えた。報道を否定しつつ、巨額投資を要する有機EL開発で日本政府や政府系機関の支援を得たい思いをにじませた。

  ただ、現段階で戴社長が国などに働きかけをするかは不透明だ。ある幹部は「(10月末に公表予定の)再建計画策定が先」と冷静に受け止める。巨額赤字を招 いた液晶事業の改革、そして需要拡大が見込まれる有機ELの生産に向けどのような手を打つかに、再建の帰趨(きすう)がかかっている。