世耕弘成経済産業相は、スマートフォン向けディスプレーメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)について、米アップルへの部品サプライヤーにとどまらない高付加価値の事業を打ち出せなければ、政府としてはJDIの外国企業との連携や売却もあり得るとの考えを示した。JDIの筆頭株主は官民出資の投資ファンド産業革新機構(INCJ)。

 安倍晋三首相の盟友である世耕経産相の今回のコメントは、JDIがINCJに追加支援を要請しているタイミングで発せられた。アップルの「iPhone(アイフォーン)」向けディスプレーで最大のサプライヤーであるJDIは、競争激化や円高、iPhone販売の伸び悩みを受けて2期連続で最終赤字を記録した。



 日本は長い間、解雇や海外への技術移転を恐れて国内の主要企業を破綻させたり、外国企業に買収させたりするのをためらってきたと見られている。

 世耕経産相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、こうした考え方はもう古いと指摘し、「今までの日本のリーダーの考え方のように、何かこれは日本でともかく持っておかなければ危ないとか、そういう単純な考え方は取らない」と述べた。

 同氏は「日本はどうしてもこれから高付加価値の国で行かなければならない。コモディティー化(高付加価値の製品の市場価値が低下し、一般的な商品になること)したものにこだわるよりは、最先端のもので、まだみんなが作れないうちにしっかりお金を稼ぐ。そして、それがコモディティー化すれば他の国に譲っていくという流れがいいと思う」と語った。

 ただ、世耕経産相はJDIの将来についてはまだ何も決まっていないと指摘。日本の技術優位性を前進させる上での同社の重要性について、あらゆる議論を受け入れる用意があると述べた。

 JDIは、INCJがソニー、日立、東芝のディスプレー事業を統合して2012年に発足させた。同社は14年に新規株式公開(IPO)を果たしたが、ほどなく逆風に直面し、株価はIPO価格(900円)の5分の1ほどの水準で取引されていた。INCJは現在もJDIの筆頭株主で、持ち株比率は35.6%となっている。

 世耕経産相はJDIに対処する2つの可能性を列挙。その一つは是が非でも日本が持ち続けること、もう一つは事業がコモディティー化したため国内にとどめておく必要がないと決めることだ。

 同氏は「今のアップルの下請けみたいな形で、アップルの業績が悪くなったら自動的に業績が悪くなるような状況ではだめだ」と話した。

 JDIの広報担当者は、変動の大きいスマホ販売にかぎらず、事業の多角化を行っていると述べた。また、同社が日本経済の成長を支えるような新商品の開発にも取り組んでいるとも話した。

 広報担当者によると、JDIは将来の投資資金のファイナンス計画についてINCJと交渉しているという。経済産業省が所管するが、事業は独立して行っているINCJの広報担当者は、主要株主としてJDIの支援を続けていく考えだと述べた。どちらの広報担当者も、支援の詳細はまだ決まっていないと話した。

 今年初め、INCJは同じくスマホ向けディスプレーを製造するシャープ買収に名乗りを上げた。INCJはシャープのディスプレー事業とJDIを統合させる構想を抱いていたが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が買収合戦に勝利した。

 JDIとシャープは、スマホなどの端末で利用が増えると期待される有機EL(OLED)ディスプレーで韓国勢に後れを取っている。