22日付工商時報によると、日本政府は赤字が続く液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)への支援を打ち切り、売却する考えがあるようだ。ジャパンディスプレイに対し、戴正呉シャープ社長(鴻海精密工業副総裁)は先月末、有機EL(OLED)パネルで提携し、中国、韓国勢に対抗することを呼び掛けていた。郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が、今度はジャパンディスプレイを手中に収める可能性も考え得る。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、世耕弘成経済産業相は同紙のインタビューで、ジャパンディスプレイの外国企業との連携や売却もあり得るとの考えを示した。業界では、ジャパンディスプレイの身売り報道を受け、離職が相次ぎ、シャープは人材を早急に確保できるとみられている。



 鴻海、シャープ、ジャパンディスプレイ、産業革新機構(INCJ)の4者の関係は微妙だ。シャープの経営再建をめぐる交渉は年初、産業革新機構が優勢で、シャープ液晶事業をジャパンディスプレイと統合する構想だったが、最終的には条件面で上回った鴻海による買収が決まった。戴シャープ社長が先月末、「日の丸連合」を呼び掛けた際、ジャパンディスプレイは「何も聞いていない」と冷淡なコメントだった。
 ただ、ジャパンディスプレイは米アップルのスマートフォン、iPhone向けの最大サプライヤーで、iPhone販売の伸び悩みなどから、2年連続で最終赤字に陥っている。世耕経産相はWSJのインタビューで、「今のアップルの下請けみたいな形で、アップルの業績が悪くなったら自動的に業績が悪くなるような状況ではだめだ」と話した。
 戴シャープ社長は21日、従業員向けメッセージを発表し、2016年度下期(10月~来年3月)の全社黒字化達成を目指すことを表明した。シャープは同日、大阪市阿倍野区の旧本社地区のビルを買い戻す方向でNTT都市開発と合意し、月内の契約締結を目指すと発表した。欧州市場の液晶テレビ事業でシャープのブランドを供与しているスロバキアのユニバーサル・メディア(UMC)と、資本提携に向け協議を進めることで合意したことも発表した。
 戴シャープ社長は4月初旬の買収契約当時の発言に沿い、旧本社地区のビルを買い戻し、就任あいさつ通りシャープを輝けるグローバルブランドにするため、積極策を次々と打ち出している。