韓国サムスン電子は11日、スマートフォンの最新機種「ギャラクシーノート7」(日本では未発売)の生産を取りやめ、今後は販売しないことを決めた。発火事故を受けて回収・交換を進めていたが、交換品も発火したとの報道が出るなど事態が深刻化していた。

 サムスン電子は11日朝、購入者の安全を考慮し、販売と交換を一時的に中止すると発表したが、午後になって一転、生産と販売の中止を明らかにした。購入者には13日から別の機種への交換や払い戻しに応じるという。同社は「ノート7を信じ、愛していただいたお客さまに深くおわびする」とのコメントを出した。



 「ノート7」は8月に韓国や米国などで発売したが、バッテリーの不具合による発火事故が相次いだ。これを受け、9月に製品の回収・無償交換に乗り出したが、交換した製品でも発火が相次いで報告され、原因を調べていた。

 一方、韓国産業通商資源省の国家技術標準院は10日、サムスン電子や民間の専門家を交えた事故の調査会議を開いた。その結果、交換品について「新たな欠陥の可能性を確認した」という。これを受け、同院は11日、購入者に対する使用中止勧告や、販売や交換の中止でサムスン電子側と合意したと発表していた。

 ログイン前の続きスマホは同社の主力事業で、スマホなどのITモバイル部門は2015年の営業利益の4割近くを占めた。最近は中国勢の追い上げで低迷していたものの、3月に発売した新製品がヒットし、業績は回復傾向にあった。「ノート7」は高い防水機能や、目の虹彩(こうさい)による認証機能を備え、回復に弾みをつける製品と期待されていた。

 同社が7日発表した今年7~9月期決算(速報値)によると、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比5・6%増の7・8兆ウォン(約7200億円)だった。部門別の業績は公表されていないものの、「ノート7」による損失を好調な半導体やディスプレーで補ったとみられている。

 ただ、「ノート7」の生産・販売の取りやめによって多額の損失が出そうで、今後の全体の業績にも影響しかねない。韓国のアナリストは、「ノート7」の問題はサムスン製スマホの別の人気機種や、今後発売する新機種の売れ行きにも影響を与えかねないと指摘。生産・販売中止を決めたことについて、「早くこの問題を整理し、雰囲気を刷新させたいのだろう」と話した。