リストラが終盤に差し掛かったころ「統括部長はどうされますか?」と人事担当者がSさんに聞いた。営業本部そのものが解体することが決まっていたための質問だった。鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)氏 (1年前に再婚3人目の子供)がもうすぐやってくるだろう。そして、会社は変わる。会社が本気で変わるためには、一気に40代にバトンを渡すべきだと感じた。すでに50歳以上の部長は全員いない。自分も50代。「退職しよう」と決めた瞬間だった。


 官公庁が主催するビジネスナビゲーターや企業の顧問としての仕事も2、3社やってみたが、「企画書についてアドバイスしてくれ」と言われたものを見ると、詰めが甘すぎて使い物にならない。やんわりと指摘すると「そこまで言われたくない」と怒ってしまう。評論家やご意見番として聞こえのよいことを言っていても、その会社のためにならないし、成長もしない。自分が一体感を感じられない仕事には、面白みがないこともよくわかった。
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