安倍総理 p2液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)は、パナソニックとソニーの有機ELパネル事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)を子会社にする。官民ファンドの産業革新機構から株式を譲り受け、スマートフォン(スマホ)や車載用の液晶パネルと産業用やテレビ向けの有機ELパネルの両事業を一体で運営する。先端のディスプレー技術をJDIに集約し、韓国や中国のメーカーに対抗する。

 革新機構が75%を持つJOLED株のうち35%を超える持ち分を2017年中に譲り受ける。JDIはJOLEDへの出資比率を15%から50%超に引き上げる。必要な資金は百数十億円になる見通し。JOLED株はパナソニックとソニーも5%ずつ保有している。

[Ref] 安倍首相が見たJOLEDの有機ELディスプレー



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 液晶と有機ELの両輪での成長戦略を進めるためJDIは筆頭株主の産業革新機構から750億円の資金支援を受ける。返済の優先度が低い劣後債と債権を株式に転換できる新株予約権付社債(転換社債=CB)を組み合わせ資金を調達。生産設備の増設などに柔軟に対応できるようにする。

 JDIはスマホや車載、パソコン向けの高精細液晶パネルが主力。JOLEDは20型以上の大中型有機ELパネルを手掛ける。両社の研究開発や営業部門を一体運営し、液晶と有機ELの2種類のパネルを用途に応じて提案できる体制を築く。

 JOLEDは15年1月にパナソニックとソニーの有機EL事業を統合して設立。医療機器など産業用途のほかテレビ向け有機ELパネルを低コストで量産する研究開発を続けている。



 日立製作所と東芝、ソニーの事業を統合して12年に設立したJDIはコスト削減が進まず、16年3月期まで2期連続の最終赤字。売上高の過半を占める米アップルのiPhoneの販売不振による受注の伸び悩みもあり、今春以降は資金繰りも悪化した。

 スマホ用液晶に依存しない戦略を打ち出すことで革新機構の資金支援を取り付けて信用力を高める。取引銀行からの融資につなげ、財務を安定させる狙いもある。

 液晶や有機ELなどディスプレー産業は日本勢が技術革新を主導してきた。00年代以降、韓国や台湾のメーカーが機動的な投資判断で生産能力を高め、国内の電機大手は相次ぎ事業を手放した。

 シャープが8月に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、日系パネルメーカーは事実上JDIとJOLEDの2社になった。JDIは革新機構の支援を取り付けてJOLEDを統合、韓台中のライバルとの競争を勝ち抜きたい考えだ。