スマートフォン向け次世代ディスプレーの座をめぐり液晶と有機ELそれぞれの陣営が激しい競争を繰り広げている。より鮮やかに色を表現し曲げられるほど薄くできる有機ELに賭けるのは、韓国サムスングループなど。一方、画像がきめ細やかで製造コストも安い液晶は、ジャパンディスプレイ(JDI)やシャープが注力する。将来的には用途ごとにすみ分ける可能性もあるが、スマホ向けは巨大市場だけに両陣営とも負けられない。

 米アップルが来年発売するとみられる次期iPhone(アイフォーン)でも有機ELの採用が有力視されており、サムスンはこれを機にパネル市場の覇権を狙う構えだ。



 サムスンは2010年発売の初代「ギャラクシー」に有機ELを採用して以降、全機種に搭載。曲げやすい特性を、画面の縁がカーブする形状などの特徴的なデザインに生かした実績がある。

 有機ELは、光の三原色であるRGB(赤緑青)それぞれに発光する有機材料の画素で構成。背面を光らせて画像を表現する液晶に比べて部品が少なくできるため薄くでき、電力消費も少ない。

 有機ELには改良の余地も多いとされる。主要な工程に必要な大型真空装置は、高価な上にメーカーも限られ「発注から受領までは数年待ち」(業界関係者)。1枚の基板から切り出せるパネル枚数が液晶に比べて少ないため生産効率も低く、取引先など関係者からは「(不良品を出さない)歩留まり率が悪く、もうけは出ていないだろう」との声が聞かれる。

 現在の製造装置の精度では、1インチ当たりの画素数を示す「ppi」は液晶が800なのに対し、有機ELは400が限界とされる。液晶の方がきめ細かく、小型画面になると有利だ。

一方の液晶陣営は既存の技術に磨きをかけている。JDIが平成29年1~3月期にも投入を目指す新型液晶パネル「フルアクティブ」は、4辺の縁幅が数ミリメートルで、全面スクリーンのように使える。2枚つなげても接合部分の線が見えにくく、見開き型の大画面スマホも可能だ。

 JDIの本間充会長兼CEO(最高経営責任者)「多くの顧客から液晶で(有機ELのような製品は)できるという声をいただいている」という。

 シャープは、低消費電力で高精細画像の独自液晶「IGZO(イグゾー)」なら、さらに高機能化できるとみている。同社幹部の1人は「液晶も有機ELのように折れ曲がる画面は作れるし、コスト優位性もある」と指摘する。

 優位性を強調する液晶陣営だが、有機ELを放置しているわけではない。シャープは、平成30年に有機ELの試作製造ラインを稼働させる計画。JDIは、ソニーとパナソニックの有機EL開発機能を統合した「JOLED(ジェイオーレッド)」の株式を追加取得し、子会社化する調整に入った。

 省電力で色鮮やかな有機ELはテレビのほか、医療機器、航空機の計器類などの産業用途で有望とされるからだ。中国、台湾のパネル各社は今年からそれぞれ政府の補助を受けて、有機ELの量産に相次いで参入しており、世界的に将来性への評価は高い。

 量産技術が確立されればコスト低下が進む。また、製造技術の進展で液晶に劣っていた解像度も向上する可能性がある。これを見越し液晶陣営も技術開発を加速させるのは必至。次世代ディスプレーの勢力図をめぐる戦いは激しさを増しそうだ。