アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は28日に開いた定時株主総会で、米国での生産や部品調達を拡大する可能性を示唆した。製造業の米国回帰をテコに雇用の拡大を目指すトランプ政権に配慮した発言とみられる。

 カリフォルニア州クパチーノにある本社で、国内雇用に関する株主の質問に答えた。クック氏は「我々はこの国の役に立つ方法を常に模索している。アップルは米国でしか存在しえないことはわかっている」と述べた。

 同氏によるとアップルは半導体やガラス、接着剤など年間約500億ドル(約5兆6千億円)相当の部品を米国の取引先から調達。コーニングやスリーエム(3M)などで働く数十万人の従業員や、100万人以上のアプリ開発者の生活を支えているという。



 クック氏は「多くの人は目に見える最終組み立てに執着する」が、それではアップルの米製造業への貢献を「過小評価することになる」として理解を求めた。

 アップルは主力のスマートフォン「iPhone」など米国で販売している製品のほとんどをアジアで生産しており、トランプ氏は昨年の大統領選挙中から名指しで批判していた。

 iPhoneを受託生産する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は1月22日、米国に液晶パネル工場を新設する検討に入ったと発表。会見した郭台銘董事長は、アップルが同工場に投資する可能性に言及している。