鴻海科技集団(フォックスコン)はシャープなど傘下4社でマイクロLED(発光ダイオード)ディスプレイ開発・製造の米ベンチャー、イーラックスの株式を8億台湾元(約30億円)余りで100%取得する計画だ。
マイクロLEDは有機EL(OLED)の次の世代のディスプレイ技術と目され、2018年にアップルウオッチ、20年にiPhoneへの採用で、5~10年後にも市場規模が1兆元規模に拡大すると予想されている。鴻海グループの総力を挙げて早期の事業化を目指し、サムスン電子をリードする狙いだ。23日付蘋果日報などが報じた。



シャープは22日、同社のマイクロLEDディスプレイ関連特許21件の現物出資で、イーラックスの合弁事業に参画すると発表した。現物出資は10月1日の予定。出資比率は、鴻海が間接的に100%出資しているサイバーネット・ベンチャー・キャピタル(英領ヴァージン諸島)が45.45%、シャープが31.82%、群創光電(イノラックス)が13.64%、鴻海のほか台湾日亜化学が9.9%出資している栄創能源科技(アドバンスド・オプトエレクトロニック・テクノロジー、AOT)が9.09%となる。

 鴻海は先週19日、新事業の発展のため、サイバーネット・ベンチャー・キャピタルが1,000万米ドルを投じてイーラックスの株式37%を取得すると発表していた。

 外電によると、イーラックスは元シャープ研究者が昨年10月に設立したベンチャー企業。

 LEDインサイドの予測によると、もし液晶ディスプレイ(LCD)の液晶、バックライトモジュール、偏光板など全ての部品が淘汰(とうた)されれば、マイクロLEDディスプレイの市場規模は300億~400億米ドルに上る見通しだ。

 アップルは14年、マイクロLEDの米ベンチャー、ラックスビュー・テクノロジーを買収し、ラックスビューの新竹科学工業園区(竹科)龍潭科学園区の工場を「秘密開発基地」としている。最近の経済誌「財訊」によると、この「秘密開発基地」では、台湾のパネル人材とサプライチェーンを結集して、マイクロLEDディスプレイの研究開発(R&D)を行っている。17年末に量産し、18年に腕時計型ウエアラブル(装着型)端末「アップルウオッチ」新モデルに採用する予定で、20年にスマートフォンiPhoneに搭載する目標だ。

 サムスンは今秋発売が予測される次世代モデル、iPhone8に有機ELパネルを独占供給するとみられている。もしアップルが自社でマイクロLEDディスプレイの量産に成功すれば、サムスンは来年以降、この1,000億元規模の大口受注を失う恐れがある。これに備え、消息筋によると、サムスンもマイクロLEDディスプレイを専門とする台湾の錼創科技(プレイニトライド)を1億5,000万米ドルで買収する計画があるようだ。

米国で中小型パネル工場か

 外電の報道によると、鴻海はシャープとともに米国でスマホや自動車向けの第6世代パネル工場の設立を検討しており、9月に計画が明らかになる見通しだ。消息筋によると、iPhone向けの可能性もある。鴻海はノーコメントだ。

 また、インド政府関係者によると、鴻海はムンバイのJNPT特別経済区(SEZ)で13エーカーの生産拠点を模索している。市場では、生産能力の51%以上を輸出に充てるとみられている。

 このほか鴻海グループでは、アップルにタッチパネルを供給している業成科技(GIS)の周賢穎総経理が22日、今年下半期に有機ELパネルの後工程モジュール(LCM)に参入すると明かした。フレキシブル有機ELパネルモジュールの生産ラインを設置予定で、投資額は10億元以上。年末に量産、来年出荷を拡大する予定だ。