6月20日午前9時過ぎ。南海電鉄堺駅の通路は足早に歩くシャープ株主であふれていた。目指していたのはシャープが用意したシャトルバス。株主総会の会場であるシャープ本社は大阪府堺市の工場地帯にあるため、徒歩で訪れるのは難しい。

 この日は、シャープが台湾の鴻海精密工業の傘下に入ってから最初の株主総会だ。出資と同時に昨年8月に就任した、鴻海出身の戴正呉社長(65)が株主総会に登場するのも初めてだ。大阪府高槻市から来た男性株主(79)は「台湾の企業の傘下に入ってから初めてなので、経営が持ち直したのか聞きに来た」と興味津々の様子で話した。



鴻海傘下に入ってから、シャープの業績は上向いた。2017年3月期は連結経常損益が3期ぶりに黒字転換し、250億円の黒字を計上した(前の期は1924億円の赤字)。最終損益も下期(16年10月~17年3月期)だけに限れば205億円の黒字だった。

 午前10時ちょうどに始まった総会の冒頭、戴社長は日本語で「株主の皆さま、おはようございます。日頃は当社にご支援たまわり、ありがとうございます」とあいさつ。ナレーションや映像などを使って事業説明や議案説明を進め、質疑応答に入った。

 戴社長は日本語でのやり取りに不自由はないが、言い回しが独特なときがある。本稿では現場の空気感を伝えるために、できるだけ忠実に発言を再現する。

 1人目の質問はシャープOBという男性株主。初めに「昨年8月に戴社長になって喜んでいる。これで国際的に通用するシャープになった」と歓迎の意を表明したうえで、配当と株価対策について問いただした。

 これを受け戴社長は「(株価は)必ず上がりたい。来年配当できるようにしたい」と回答。続けて「私は有言実行の人。どうすればいいかはもう発表した。東証1部に復帰してから社長はやめる」と以前からの持論を繰り返した。

シャープは5月26日に中期経営計画を発表。2020年3月期の売上高を17年3月期比1.6倍の3兆2500億円、営業利益を同2.4倍の1500億円に引き上げる目標を掲げた。「どうすればいいか」というのはこの中計を指している。

 戴社長は続いて「発表した数字、この3年間は私責任取ります。どういう形か分からないけれど会長という形ある」と社長を退いたあとも会社に残ることを示唆した。