EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は22日、米国投資に5年で100億米ドル以上を投じ、サプライチェーン(供給網)ごと移転する「フライング・イーグル計画」を明らかにした。これまでに表明していた液晶パネル工場だけでなく、バッテリー、機構部品などのサプライヤーもまとめて移転し、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能(AI)技術と結び付け、スマートマニュファクチュアリングを実現する考えだ。23日付工商時報などが報じた。
郭董事長は、▽オハイオ州▽ペンシルベニア州▽ミシガン州▽イリノイ州▽ウィスコンシン州▽インディアナ州▽テキサス州──と協議していると明かした。6月上旬に4日間で3つの州知事らをシャープ工場に案内し、投資条件について話し合っており、7月には1カ月間訪米する予定だ。



 郭董事長は、まず3つの州に進出し、半年後か1年後にさらに3つの州に投資すると述べた。工場1基だけを建設するわけでなく、川上から川下まで垂直統合のサプライチェーンを現地で新たに構築するため、

投資額は従来話に出ていた70億米ドルにとどまらず、100億米ドルを超える可能性があると語った。

 米国に移転するサプライチェーンには、▽パネル▽バックライト▽パネルモジュール(LCM)▽バッテリー▽機構部品▽LED(発光ダイオード)パッケージング(封止)──などのほか、半導体封止を含む可能性があると説明した。クラウドやビックデータ技術を用いれば、日本や台湾と情報交換しつつ、世界中を管理できると語った。

 米国での製造は、従来の中国のように多数の労働力を使って組み立てるわけにいかないので、クラウドやAI、自動化技術を利用すると述べた。それでも各州に数万件の就業機会を創出すると話した。

 株主総会に出席した李開復独立董事は、自身は過去30年以上AI産業に従事しており、今後10年でAI産業は3回の発展があると見通しを示した。1回目はソフトウエアでアマゾンや百度(バイドゥ)が成長し、2回目はセンサーやスマート家電の発展でソフトとハードの統合により鴻海も恩恵にあずかると指摘。3回目は市場の成熟でコストが低下したときで、産業用だけでなく個人や家庭用まで応用製品が広がると予測した。