経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は4千人規模の人員削減を含む構造改革案をまとめ、外部資本を受け入れる検討に入った。液晶事業の低迷で悪化した財務基盤を立て直し、韓国企業に出遅れた有機ELへの転換を急ぐ。液晶パネルの生産体制は抜本的に見直し、固定資産の減損などで2018年3月期に1500億円超の特別損失を計上する。  

JDIは日立製作所と東芝、ソニーの液晶事業を12年に統合し発足した。主力の液晶事業の不振に加え、有機ELへのディスプレー事業の転換が遅れたことから業績が悪化している。設立5年で初めて抜本的な構造改革に踏み切る。



 JDIは財務基盤を立て直すため、国内外の事業会社や投資ファンドなどとの資本業務提携を模索し始めている。18年にも提携先を決める。

 主力の液晶パネル工場は大幅に再編する。人員削減は中国やフィリピンの部品の組み立て工場が中心で、生産規模を縮小し3500人超を減らす方針だ。国内も250人程度の早期退職を募集する。

 JDIの全社従業員数(3月末時点)は約1万3千人で、国内は約5千人。人員削減は全社の約3割にあたり、固定費を年ベースで500億円以上引き下げる計画だ。

 国内ではスマートフォン(スマホ)向け液晶パネルの能美工場(石川県能美市)での生産について年内をメドに停止する。数百人の従業員は近隣の白山工場(同県白山市)、石川工場(同県川北町)に配置転換する。能美工場では有機ELパネルを生産することを検討している。

 固定資産の減損や人員削減などで1500億円超の特損を計上する。18年3月期は特損に加えて液晶パネルの販売低迷も重なり、最終損益は2千億円規模の赤字(前期は316億円の赤字)となる公算が大きい。最終赤字は4期連続となり、JDIの株主資本は半減する見通しだ。

 足元ではスマホメーカー大手が相次いで有機ELパネルを採用している。JDIは液晶から有機ELへと切り替わる技術動向を読み誤り、研究開発の資金力も不足したことで韓国メーカーに先行を許した。

 資金不安を抱えるJDIは、筆頭株主で官民ファンドである産業革新機構による債務保証を受けた上で主取引銀行から1100億円融資を得る。みずほ、三井住友、三井住友信託の主要3行は新たな融資枠を設けて支援する考えを示している。

 スマホ向け有機ELパネルを安定的に量産するのは韓国サムスン電子だけで、韓国LGディスプレーが後を追う。さらに政府の資金支援を受けて中国ディスプレーメーカーも開発投資をつぎ込んでおり、有機EL市場での日本勢の存在感は乏しい。