ディスプレイや照明に変革をもたらす次世代テクノロジー、有機EL。その技術の可能性を20年以上も前から信じ続け、東北の地で地道な研究開発に取り組んできた化学者がいる。その男が生み出した白色有機ELによって、次世代の薄型ディスプレイや曲げられるシート型の照明などの実用化が一気に加速した。そんな彼の活動の場は研究開発にとどまらない。商品化から市場形成まで、システム全体を並行して構築しようとする視座の広さをもち合わせているのだ。


わたしは長らく有機ELの技術的な優位性と将来性の高さを強く主張してきたのですが、液晶テレビを手掛けていた人たちからは、そんなこと不可能だと言われ続けてきました。それこそ「有機物に電気を通して光らせるなんて正気か?」といった扱いですから(笑)。ただ、彼ら自身もブラウン管テレビをつくっていた人たちから、かつて同じようなことを言われてきたんでしょうね。
だからといって、わたしは有機ELテレビが「究極のテレビ」だと思っているわけではありません。課題とされてきた有機材料の寿命は長くなりましたが、それでも半永久的に劣化しないわけではないからです。有機材料の膜を基板に形成する真空蒸着の現場に行くと、いまは全長100m級の巨大な装置があります。これを人間はあと何百年も使い続けるかといえば、そんなわけはありません。プリンターのようにインクジェット方式で有機ELテレビをつくれるほうが、より究極に近いでしょうし、それでも究極ではないでしょう。
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