韓国LGディスプレーは高精細な高級テレビに使う有機ELパネルを2018年に最大280万台分生産する方針を固めた。17年生産見込みに比べ6割増やす。現在、テレビ向け有機ELパネルを独占的に供給するLGの増産により、有機ELテレビの世界市場も同程度拡大する見通しで、普及に弾みがつきそうだ。

LGディスプレーはテレビ向け有機ELパネルの生産量を17年の170万台分から18年は250万~280万台分に増やす。17年中に増産のために前年比約3倍の5000億円程度を投じるもよう。LGの増産により、テレビの世界需要に占める有機ELのシェアは台数ベースで18年に1%程度を占める見込み。テレビメーカーの競争が一段と激化し、価格も下がる公算が大きい。



 LGディスプレーは、日本のソニーやパナソニックを含む13社に有機ELパネルを供給する。研究開発用を除く市販のテレビ向けでは「ほぼ100%のシェアを握る」(LG)という。

 LGディスプレーは10月に17年の設備投資額が前年比9割増の約7000億円になると発表。うち約7割を有機ELパネルの増産投資に充てるとみられる。18~20年ごろにかけて初の中国工場建設を含めて中韓両国で同パネルの増産に1兆円以上を追加投資する方針だ。

 LGグループによると、17年前半の日韓両国のテレビ市場(金額ベース)は、1500ドル(約17万円)以上の高級機種に限ると、有機ELテレビが7割を占めた。2割だった16年から様変わりし、液晶パネルに取って代わった。18年は1000ドル前後の売れ筋の価格帯で液晶の牙城を切り崩せるかが焦点になる。

 テレビ向けとスマートフォン(スマホ)向けでは有機ELパネルの収益環境が異なる。スマホ向けでほぼ独占的に供給する韓国サムスンディスプレーが四半期(3カ月間)に1千億円前後の営業利益を稼ぐのに対し、LGはまだ赤字。スマホの方がテレビ向けより単価が高いためだ。LGは増収効果で18年下半期の黒字化を目指す。

 サムスンのスマホ向けパネルは赤緑青の発光材料をそれぞれ光らせる。LGのテレビ向けパネルは赤緑青の3色の発光材料で白色を作り、カラーフィルターを通して映像を表示する。現状、テレビ向けでは赤緑青の発光材料を光らせる方式は製造技術の面で難しい。

 今後は競争も一段と激化する。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)グループは早ければ19年にスマホ、テレビ向けに同パネルの量産を始める。コストを下げる新しい生産技術を導入し、巻き返しを狙う。

 中国の京東方科技集団(BOE)は成都工場で10月に中国スマホメーカーにパネルの出荷を始めた。20年までに米アップルへの供給を目標に総額1兆6千億円規模の設備投資を見込む。