韓国南東部の慶尚北道浦項(ポハン)市で15日午後2時半ごろマグニチュード(M)5.5、M5.4の地震(浦項地震)が相次いで発生。サムスン電子、LGディスプレイ(LGD)、SKハイニックスの生産ラインが一時停止した。韓国メーカーの生産ラインが全面回復するまで、液晶パネル大手の群創光電(イノラックス)、友達光電(AUO)などは、受注が一時的に増える可能性がある。16日付経済日報などが報じた。

 浦項地震は、昨年9月に次いで韓国の観測史上2番目に大きい規模で、韓国のケーブルテレビ局、YTNによると62人が負傷、1,562人が避難。民間と公共の建物計1,293件に被害が出た。

 LGDは、慶尚北道亀尾(クミ)市の工場で稼働を一時停止したが、地震の影響がないと確認でき次第、再開していると表明した。サムスンやSKハイニックスは、一部生産設備が地震を観測し、自動的に停止したが、すぐに正常運転を再開したと説明した。



 IHSマークイットの謝勤益(デビッド・シェイ)シニアディレクターは、LGDの亀尾第6世代工場はノートPC用パネルが中心で、モニター用やスマートフォン用パネルは少なく、テレビ用パネルは作っていないと述べた。LGDの7.5世代、8.5世代工場や、サムスンのパネル工場は北部にあるため影響はなく、半導体工場も震源地から100キロメートル以上離れているので影響はないと指摘した。

 イノラックスは、現時点で受注の移転はないとコメントした。AUOは、競合についてはノーコメントとした。

 パネル業界に詳しい人物は、韓国は地震が少ないので、台湾や日本並みの防振装置を備えておらず、今回の地震でパネル産業のサプライチェーンに一定の影響が出ると指摘した。生産ラインへの被害状況や、サプライチェーンへの影響の度合いが分かるのは通常、地震発生の3~4日後だと述べた。

 業界関係者は、これまで台湾で発生した地震を考えると、パネルや半導体メーカーの生産ラインは自動的に一時停止し、容器(チャンバー)を洗浄したり生産ラインに飛び散った破片を片付けてから、稼働を再開するので、一定の時間がかかると指摘した。台湾と韓国のパネルやDRAM産業は補完性があるので、イノラックスやAUO、DRAM大手の南亜科技、華邦電子(ウインボンド・エレクトロニクス)などに一時的に転注が見込まれると述べた。

 今年はパネルのオファー価格が高く、メモリーも強い需要が続いており、最終製品メーカーは利益を確保するため、メモリー搭載量を減らし始めている。地震により、下落に転じたパネル価格が反転したり、DRAM価格がさらに上昇すれば、パソコンやスマートフォンブランドの華碩電脳(ASUS)、宏碁(エイサー)、宏達国際電子(HTC)の負担が増える見通しだ。