好業績にわく米アップル関連銘柄にあって、ひとり低迷から脱却できずにいる液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)。2017年4~9月期連結決算のある情報開示が一部の市場関係者の間で話題になっている。資金の増減を示すキャッシュフロー(現金収支)計算書の数字が任意開示のIR説明会資料と、法定開示の四半期報告書で違うのだ。

説明会資料では、設備投資のためあらかじめ顧客のスマートフォンメーカーなどから受け取る「前受け金」の増減(4~9月期は356億円の減少)を、営業活動による資金増減を示す営業キャッシュフロー(CF)ではなく、財務活動による資金増減を示す財務CFに含めた。一方、四半期報告書をみると前受け金はこれまで同様、営業CFに含まれている。



この結果、説明会資料だと営業CFは全体で308億円のプラスとなり、四半期報告書だと48億円のマイナスと正反対の傾向になってしまう。説明会資料のほうが四半期報告書よりも本業による資金収入が良く見える。

JDIは「前受け金を長期性負債と見なした。借入金に近いと考えれば、営業CFより財務CFに含めたほうが実態に合っている」と説明する。説明会資料は任意開示なので法的責任は問われないが、これまでの開示との連続性が薄れてしまう。「資金繰りに悩んできたJDIが営業CFを良く見せたいため、計上先を組み替えたのでは」と勘繰られても仕方ない。

実際、下期は厳しい状況が続きそうだ。

上期(17年4~9月期)は1%ながらも増収を確保できた。円安・ドル高の後押しに加え「iPhone7」の販売サイクルが従来より長かったとみられ、「有機ELパネルを使った『X(テン)』の発売前でも意外と液晶パネル販売が底堅かったようだ」(国内証券)との見方がある。ただ、上期に増収を確保したことで、かえって下期の苦境ぶりがクローズアップされる形になってしまった。

JDIは今期の業績予想を開示していない。1700億円のリストラ費用計上で、4期連続の最終赤字は避けられない。前期に8844億円あった売上高については「15~25%減る」(大島隆宣執行役員)との見方を示している。15%減でとどまれば約7500億円、25%減の悲観シナリオなら約6600億円に落ち込む計算だ。

上期の3738億円を差し引けば下期は2900億~3800億円となり、前期の下期(5134億円)を大きく下回る。アップル銘柄にとって本来、クリスマス商戦を迎える下期は稼ぎ時。有機ELシフトを進めるアップルや中国スマホ向けの液晶パネル販売がいかに苦戦するかがわかる。

今夏に1100億円の融資枠を設定したことなどもあって、現時点では資金繰りは問題なさそう。ただ、本業が厳しくなるなか、JDI経営陣が実力以上に経営をよく見せようと傾き始めているとすれば――。株価は10月に有機ELパネル強化などが好感されて一時、8カ月ぶりの株価水準を取り戻したものの、11月8日の決算発表後は大きく売られ、いつものさえないJDI株に逆戻りしてしまった。再建の道のりはなお厳しそうだ。